(2)寮長と
アルカラン王国、首都バズに王立魔法学校はあり、その敷地の一部に学生寮がある。寮を含めたその建物は華麗さや壮大さを兼ね備え、威厳に満ち、それを見た国民を圧倒する。その寮の玄関脇にみすぼらしい格好をして座りこんでしまったコートを迷惑に思ったのか、憐れに思ったのかはわからないが、遠くの寮長室からたまたまその様子を見かけた寮長がゆっくり歩いてコートのそばに来た。
両親が既に亡くなっているコートの不幸な身の上を知っていた寮長は、うずくまって動かないコートに「君はこれからどうやって生きていくのかね」と声をかけた。
コートは寮長を仰ぎみて、わからないというように首を振った。その表情は絶望に満ちていた。寮長は続けてこう言った。「都市や村には大陸間や王国間を行き来する輸送業者や商人達の発着場がある、そこには村や都市間を行き来する時に出没する盗賊やモンスターから商人達を護衛する仕事がある。護衛希望のものは、発着場の護衛受付に行き、自分の剣術や魔法スキルなどのステータスを提示して客からの依頼を待つのだ。バズなどの大都市は商人の規模が大きく給料も良いが、王国軍を除隊したり、辞めたりした剣術使いの戦士や魔法使いが登録してるから、お前では厳しいかもしれんがな。だが、小都市や村なら大した給料にはならんが、お前程度のスキルでも需要はあるかもしれん。そういったところに行き、生きてゆけば良い。」
寮長の言葉は厳しかったが、王国軍除隊レベルなら剣術2か魔法2以上のステータスは保持しているため、剣術0.5、魔力1で属性が風のコートには勝ち目がなかった。風1の魔力は同じ魔力1の炎、氷雪、土を吹き飛ばすことができず、それらの魔法は風魔法の防御をあまり問題なしに攻撃できる。さらに同じ魔力1の雷は風魔法の防御など無視するレベルで強力であるため、同じ魔力1ならあらゆる攻撃属性の中で風属性は最弱となる。風も2以上になれば、炎、氷雪、土を吹き飛ばせるし、雷も風の力で方向を替えられるため、他の攻撃魔法同様の力を発揮できるのだが。
「わかりました、護衛をやってみます。ただ、せっかくバズにいるのでバズの受付を覗いてから考えます。」とコートは答えた。
寮長は「そうするがよい。」と言った。続けて「バズなどの大都市には魔法書を売ってる店がある。魔法書を読んで独学でレベル2を目指すこともできる。レベル2になったと思ったら、王立魔法学校に来い。テストをしてやるから、それに合格すればレベル2のステータスをやれる。頑張ることだ。」
そう言った後、寮長はコートにステータスカードを手渡した。カードには顔が魔法でプリントされ、王立魔法学校卒業とあり、更に剣術と魔力のスキルが記入されていた。寮長は「これがあればアルカラン王国の他の都市にも容易に入ることができる。失くすでないぞ。」と言った。
立ち上がったコートはステータスカードをポケットにしまい、ありがとうございましたと御礼を言い、寮長に頭を下げた。コートは荷物を背負い、バズの護衛受付を目指し歩き始めた。寮長はしばらく去りゆくコートを見送っていたが、ほどなくして寮に戻った。
チート能力設定の主人公はよく見ますが、コートは逆チートです。




