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ぎょぎょぎょ!次なる国選び

「え、いや、何でもないよ。あはははは」


私はその答えに迷って思わずわかりやすい嘘をついてしまった。


「なら、いいんです。でも私心配なんです。カンナちゃんのことが」


真剣そうな顔をしているガーちゃんの目は少し潤んでいた。


「そんなに心配?」


「心配ですよ。私の大切な人なんですから」


私の心臓がおかしいのかな。胸がドキドキするんだけど。これっていわゆる恋ってやつ?


「とにかく、しばらくはこの国で休んでいきます。カンナちゃんは数日安静にしていてください」


私はその言葉を聞いて自分の右手を見る。包帯でぐるぐるにまかれた右手はその傷の大きさを物語っていた。なんかこのまま腕飛ばせそうだな。


「ありがとう。しばらくは休んでおくことにするよ」


「では私は街のお手伝いに行ってきますね。かなりの被害が出ているようですから」


ガーちゃんはそう言って避難所の医務室を出る。誰もいない部屋で私の力は完全に抜ける。


「異世界、怖すぎでしょ」


あまりにも濃い一日だった。死んだと思ったら知らない異世界に飛ばされて、追放に魔法。絶対一日で起こったなんて誰も信じてくれないだろう。


「私、少しは変われたのかな」


異世界に来る前の私には何もなかった。平凡で他より優れてるわけでも劣っているわけでもない。誰からも必要とされていないハブられる存在。


「あぁ、なんでこんなに目が熱いの」


頬を一筋の温かさが伝わってくる。我慢、できないや。


「私、もっと強くならなきゃ。ガーちゃんを守るために」


今日一日通して分かった。私に大事なものをくれたガーちゃんを守るには今のままじゃいけない。なら次に行く場所は決まってる。


それから数日間。私は休みながら言葉を教えてもらっていた。話自体はできるけど、文字自体はこちらの言葉なので教えてもらわなければ読むことすらできない。安静にしながらフィシュタニアの人々に言葉を教えてもらい、ある程度の言語を覚えるところまでには上達をした。街の復興は国民の協力と、ガーちゃんの指揮によって効率的に進められ、瓦礫は片付けられ新たな家の建設が始まっているとガーちゃん本人から教えてもらった。


「カンナちゃん、体の調子はどうですか?」


「だいぶよくなったよ。本当にガーちゃんのおかげだよ」


ガーちゃんは少し頬を赤らめながら口を開く。


「カンナちゃんが頑張ったからだよ。最近は文字の勉強を頑張ってるって聞きましたよ」


「いやぁ、やっぱり文字は読めた方がいいかなーって思ってさ」


私もむず痒い感覚から頭を人差し指でポリポリとかく。


「それで今日は大事な話があるんです。そろそろ次の国に移動しようかなと考えているんです」


ガーちゃんは真剣な顔つきで私にそう言うと、持ってきていた地図を広げて周辺の国の説明を始める。


「周辺の国だと刀の国『ソードルチア』、水の国『ウォータンブルク』、毒の国『ポイズニスタ』、獣の国『アニマリル』の四カ国ですかね。どこか行ってみたい国などありますか?」


「ねぇ、ガーちゃん。魔法の国ってある?」


「え、魔法の国? 一応あるにはあるよ。魔法の国「マジカランド』、魔法の始まりの地にして魔法の最先端の国。多くの魔法使い、魔導士が住む国。でもフィシュタニアからかなり距離があるんだよ。何カ国かを経由していかないと辛いです」


「それでも、行きたい。強くなりたいんだ、私」


私はただガーちゃんを強く見つめる。ガーちゃんはフフッと嬉しそうに笑って私の言葉に答えた。


「こんなガーちゃんの顔初めて見ました。じゃあマジカランドを目指して旅をするようにしましょう。そうなると次の行先は獣の国アニマリルですかね」


「獣の国。やっぱり獣人とかいるのかな」


「ぎょぎょ! そうぎょぎょよ。アニマリルは獣人と獣が共存している国ぎょぎょ」


医務室の扉が急に開くと、そこにはマガロからムキムキな立派な筋肉のついた手足が付いた化け物がいた。


「だ、誰!?普通に怖いんだけど」


「怖いとか言わないでぎょぎょ。俺の名前はぎょぎょっと。フィシュタニアのアイドルさ」


変わったアイドルもいるものだ。こういう小さい集落特有の謎文化なのだろうか。


「か、かわいい」


ガーちゃん本気か!? 待ってよなんでそんなに顔赤くしちゃってるの! さっきまでの私に見せてた顔はどこ!


「とにかく。明日にはアニマリルに出発ってことでいいよね? ガーちゃん」


「いいですよ~。あ~腕硬い。筋肉すご~い」


どこが可愛いのか、なぜ人気なのかわからない謎のアイドルぎょぎょっとのせいでグダグダになってしまったが、私たちが向かう新たな国が決まったのだった。

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