打ち出す炎
私の髪はいつもよりも赤く、そして炎のように逆立っていた。
「私の術を破った程度でいい気になるなよ」
ヴァンパイアはそう言うと、五つに分裂して私の周りを囲む。
「邪魔」
私はそう吐き捨ててファイヤーボールを一体に向かって放つ。
「だから遅いって言ってんだよ!」
五人のヴァンパイアは一斉に飛び上がると、手刀を掲げて私の元へと落ちてくる。
「だから、邪魔だって」
私は体の中の魔力を円形状にイメージして右手を掲げて解き放つ。
「グ、なんだこの魔法は。おかしい。魔力量が増え続けている。こんなことがあっていいはずがない」
私の頭上に現れた円形状の炎を天に向かって放つ。
「ファイヤーリング」
「なぜこんなことに!」
一体のヴァンパイアにヒットすると、残りの四人は私から距離をとる。
「分裂でも倒せないなんて、まさか私にここまでさせるなんてね」
ヴァンパイアはそう言葉を溢すと、再び一人になり魔力をため始める。
「私の秘儀の一つ、喰らうがいい。ヴァンパイアロード!」
ため込んだ魔力を手刀へと流し込み一直線に私の元へと突撃してくる。
はぁはぁ、結構限界が近いかも、これ。次で決めなきゃまずい
「これで決める」
私は右手でピストルの形を作ると、ヴァンパイアに照準を合わせる。
この一撃を打ったらしばらく立ち上がれないかもしれない。でも私はガーちゃんのこの世界に来てから助けられてばかりだ。私のせいで死なせたくなんかない!
私は体の奥底から湧き出る魔力を弾丸のサイズほどに凝縮し固めていく。
イメージしろ、私。この世界に来てから私はこうやって魔法を使ってきたはずだ。これがもともとのカンナの才能なのかもしれない。だけど私は魔法の正しい使い方なんて分からないから。こうするしかないんだ!
指先が赤く光ったかと思うと炎をまとい始める。
指が熱い、体がはちきれそう。でも私は止まれない。
「死ね! 私のために!」
「ファイヤー!ショット!」
私は残り三メートルほどにまで近づいたヴァンパイアに今出せる最大の一撃を放った。
「ぶ、ブースト」
ヴァンパイアの後ろから私の魔法にバフをかけてくれる。ガーちゃんが最後の力で魔法を使ってくれたようだ。
「行け!」
「私が負けるはずが、ないのに!」
私が放った弾丸はヴァンパイアの右肩を貫通した。高温だったためか傷口が溶けている。ヴァンパイアはその衝撃でふらつく。
「クソ、まさかここまでとはな」
「それは、どうも」
お互いふらふらだ。もう気力もない。
「そんなお前に私の名前を教えてやろう。クルーリ・テンペスタ。それが私の名前だ。」
ヴァンパイアはそう言って左手で髪を靡くと、陰に溶けるように消えていった。
「私、やったよ」
私はガーちゃんにそう言い残し、意識を手放した。