ぬるぬるはぬるぬると現れるのか
「なななな、なんガメスかあれわ!」
ガメスは目の前に現れた火の玉に驚きを隠せていなかった。自分の体の数倍ほどの大きさの火の玉を初級魔法であるファイヤーボールと詠唱して出してきたのだから無理もない。
「熱い、熱いガメス!」
ガメスの体はどんどんと近づいてくるファイヤーボールによって乾燥してしまい、そのナメクジのようにぬるぬるとした体の水分は蒸発し、その巨大な体を動かすことは容易ではなかった。
「私たちの魔法をくらえー!おえええええええ」
私はそんな大事な場面でも吐いていた。気持ちがいいくらい吐いていた。
「うぎゃああああああああ」
ファイヤーボールはガメスへ直撃すると、ガメスの体を焼き尽くすかの勢いでガメスの体を飲み込んだ。
「こんなはずじゃあああああ」
最後の力を振り絞ったと思われる叫び声を聞いたころには私たちの吐き気もある程度緩和されていた。
どうやら勝ってしまったらしい。実にあっけないじゃないか。
「ガーちゃんやったね!」
「うおえええええええ」
どうやらガーちゃんの回復はもう少し時間がかかりそうだ。
「ほら、お水飲んで」
私たちは何とか避難所までたどり着くと、街の人々に脅威がなくなったことを伝え、水を貰った。
「ぷはぁ。生き返ります」
ガーちゃんの顔色もさっきよりもよく見える。
「まさかあんな気持ち悪い生物がいるとは。恐るべし異世界」
私はあまりの衝撃に思わずそうつぶやいてしまった。本当にあれは何だったんだろうか。
「ガーちゃん。あのへんな生き物は何だったの?」
「うーん、たぶん大陸の北の方になるぬるぬる国の生物、だとは思うんですけど」
「けど?」
私の問いかけに悩みながら返事をするガーちゃん。一体何が変なんだろう。
「あの手の種族というか生物って長距離移動は無理なはずなんです。私たちでさえぬるぬる国に行くのに二か月はかかりますし、一人でここまで来たとは思えないんです」
その話を聞いて確かにと疑問が膨らむ。街の被害も一人にしては規模が大きかった。まだ他に首謀者がいるのかもしれない。
「ガーちゃん。私もっかい街見てくる!」
私はガーちゃんにそう告げると、勢いよく避難所を飛び出した。