デコレーションは元気になる魔法
書き方を変えてみました。こちらの方が良いようならこれからの作品もこの形式で書かせていただくとともに、これまでのストーリーもこちらの書き方で修正、加筆しようと思います。
「おはよう、ガーちゃん」
カーテンの隙間から差し込む光に、私は目をこすりながら目を覚ました。
鳥の声がいい目覚まし時計の機能をしてくれている。
「あれ、ガーちゃん?」
だけど一緒に寝ていたはずのガーちゃんの姿は隣にはなかった。
部屋を探し回ってもガーちゃんの姿は見当たらない。唯一の手掛かりは机の上に置かれた置手紙だけだった。
「出かけますって書いてあるけど、私昨日の夜気に障るようなことしちゃったかな?
私はふと昨日の夜の出来事を思い返す。
抱きしめたことだけは覚えている。覚えているけれどそれより先の記憶はほとんど残っていなかった。
「もしかして抱き着いたのがダメだった!?」
私は急いで部屋を出ると、一階にいる受付のドーナさんにガーちゃんのことを尋ねてみることにした。
「ドーナさん! ガーちゃんが朝からいなくなっちゃって。何か知りませんか?」
「あー、それなら朝早くに買い出しに行くって出て行ったよ。良いお店ないか聞かれたからチョベリグなお店教えたからよく覚えてるよん。でも、それにしては帰りが遅いよね。もう少ししたらお昼なわけだし」
ドーナさんはそう言って受付に設置されている時計に目をやる。
時計は時刻10時を指していた。
「ありがとうドーナさん! 私ちょっと探してくる!」
私はドーナさんにそう言い残して宿を後にした。
宿を飛び出したはいいものの、手がかりはほとんどないも当然だった。
ドーナさんが言っていた店に数時間も長居しているとは考えずらい。どこかで何か事件に巻き込まれている可能性がある。
「早く見つけないと」
私は早速聞き込みと捜索を始める。
スイーツマジカルフェスティバル直前ということで街には準備している人で溢れかえっていた。
しかし、いくら話を聞いてもそれらしい手がかりどころか、目撃者すら見つけられなかった。
「どこ、行ったんだろ」
「お、こんなとこで会うなんて奇遇だな」
私が路頭に迷っていると、たまたま通りかかったプリンさんに声を掛けられる。
大量の紙袋を持っていることからも、買い出しの著中であることがうかがえた。
「ガーちゃんが行方不明なんです」
「そりゃ大変だな。昨日まであんなに仲良く一緒に居たのにいなくなるってことは、何か事件に巻き込まれたかもしれないな」
「そんな。ガーちゃん、どこいっちゃったの」
私は自然と涙が溢れてきてしまった。
思い返してみれば、私がこの世界に来てから、隣にはずっとガーちゃんがいた。
何もわからないでいる私に寄り添い続けてくれた。
そんなガーちゃんを失うなんて、想像もできなかった。
「そんな泣くな。私も探すの手伝ってやるから」
「ほんとに!?」
「別に嘘はつかねぇよ。ただ荷物は置きに帰りたいから手伝ってくれ」
私はプリンさんから紙袋を半分受け取ると、店へと歩き出す。
「そんな不安そうな顔すんなよ」
「あ、ごめんなさい。顔に出てましたか?」
「昨日までとのテンションと違いすぎだ。本当に私の喧嘩を止めに入ったやつとは思えないな」
プリンさんから見た私は昨日とは全然別物らしい。私は平然を装っているつもりだったのだが、上辺だけなのが見透かされてしまっているみたいだ。
それから会話はない。二人で淡々と歩いて店まで着くと、荷物を冷蔵庫へと保管した。
「あら、お客さんまた来てくれたのかい? でもどこか浮かない顔だね」
「ショトさんこいつと知り合いだったのか」
「こいつとは何てこと! この間うちのケーキを食べに来てくれたお客さんだよ」
ショトさんと呼ばれたその店員さんは、あの時プリンさんを叱っていた店員だった。
私の変化に気付いたのか、心配の声をかけてくれる。
「友達が行方不明になってしまったんだってよ」
「行方不明。もしかしたら最近起きてる連続失踪事件と何か関係あるかもしれないね」
「何ですか、それ」
「私も関係あるんじゃないかって睨んでる」
店員さんの口から出てきた連続失踪事件という言葉に、私は思わず食いつく。
プリンさんもどうやらその事件関係ではないかと考えていたらしく、ショトさんの言葉に反応する。
「最近、少女をターゲットにした行方不明事件が起きていてね。お祭り前で盛り上がっているというのに、目撃者が一人もいやしないって言うんだよ」
「私の知り合いの娘さんも行方不明になったらしくてな。時間がある時に探すの手伝ってあげてたんだが、どうも見つからなくてな」
「証拠の無い誘拐事件、ってことですよね」
「これはあくまで推測に過ぎないけどな」
証拠を残さずに起きている連続失踪事件。ガーちゃんは本当にその事件に巻き込まれてしまったのだろうか。
私が悲しそうに下向いていると、ショトさんはショートケーキを私の前に出した。
「これ食べて、元気出しな」
「でも、私今お金持ってないです」
「お金なんていいんだよ。そんな悲しい顔してちゃ、大切な人も見つからないからね。こうやってデコってサービスだよ」
ショトさんはそう言って私のショートケーキの上に苺をもう一つ乗せると、お皿の上をクリームでデコレーションしてくれる。
私はショトさんに言われるがまま、席に着くと、ショートケーキを食べ始める。
「デコレーションはいつだって誰かのために、元気のためにすることよ。お化粧と一緒。元気がなかったら何もできないんだから」
「ありがとう、ございます。すっごく美味しいです」
私はボロボロと涙を溢しながらショートケーキを食べる。
口の中が甘さと優しさでいっぱいになっていくのを感じる。
泣いてるばっかりじゃダメだ。絶対助けるからね、ガーちゃん。
私がショートケーキを食べ終わる頃には、すっかり涙は止まり、綺麗な夕陽が空を橙色に染めていた。




