お菓子の見た目のおかしな国
ガラガラと回る馬車の車輪の音が心地いい。森の気持ちよい風が頬を撫でる。
アニマリルを出発して数日、私たちはシュガリーまであともう少しというところまで来ていた。この数日はジェシカさんの馬車でガーちゃんとのんびり過ごしている。シゲルから貰った焼きジンニンを食べたり、ジェシカさんも入れて三人でガールズトークに花を咲かせたりと、つかの間の休息を堪能していた。
「なんか久しぶりに平和が続いている気がする。空気が美味しい」
「カナちゃん、ずっとそればっか言ってるよ」
ガーちゃんは少し呆れたようにそう言った。確かに馬車での移動は楽だけど、結構退屈だったりもする。
「ジェシカさんに運転任せっきりでほんとに申し訳なくなるよ」
「しょうがないよ。私たちどっちも馬車の操縦が分からないんだから」
「そうよ。いつもだって私が一人でこうやって商品を売りに行っているんだから」
私たちの話を聞いていたジェシカさんは優しい言葉を投げかけてくれる。
「本当に感謝しかないです! ん? なんか甘い匂いがするような」
「そうですね、まるで風に匂いがついているような」
何の匂いというのは言葉では表しづらいのだが、ほんのり甘い匂いがする。まるでいろんなお菓子が混ざったようなそんな匂いが前の方から風に乗ってしてくる。
「この匂い、もうすぐよ」
ジェシカさんはその匂いを嗅ぎなれているからか、すぐに現在地を教えてくれる。
「そろそろ到着だ!」
私は荷台の前の方に行くと、森を抜けるのを今か今かと待ち望んでいる。
「ほんと、子供みたいですよ」
ガーちゃんもそう言いながら私の隣にくる。
「ほら、見えてくるよ。あれがスイーツの国、シュガリーだよ!」
ジェシカさんの声と共に森を抜けると、平野の真ん中に、まるでホールケーキのような円形の塀が見えてきた。
「まるで、ショートケーキみたい」
外壁は白く塗られていて、外壁を支える土台はクリーム色、塀の上に所々設置されている見張り台のような場所は赤色。国の外観はショートケーキそのものと言っても過言ではなかった。
「あら、ショートケーキを知っているのね。ショートケーキはシュガリーの名産の一つよ。お茶と一緒に食べると美味しいのよ」
ジェシカさんは食べた時を思い出しているのかニコニコと笑顔が溢れている。まさか異世界に来てショートケーキが食べられるなんて。絶対食べなきゃ!
「私、ショートケーキって聞いたことしかなくて。早く食べてみたいです!」
ガーちゃんも私たちの会話からテンションが上がっているのが声色から分かった。
「じゃあ入国の手続きに入っていくわよ」
私たちはシュガリーの門に近づくと、私たちは馬車を降り、入国検査が始まる。
「ジェシカさん、お久しぶりです。いつものジンニンの輸入でしたね。それでしたら納品書と、商品の個数を確認させてもらいますね」
入国審査官の男性は、そう言って書類を預かると、荷台の上で検査を始める。
「今回も特に問題はなさそうですね。入国を許可します」
「ありがとう。いつもご苦労様」
ジェシカは入国審査官から書類を返してもらうと、そう言ってペコリと会釈をした。
「それと、お二方はどのようなご理由で入国を?」
「観光に来たんですけど。これを読んでいただければわかると思います」
ガーちゃんはそう言ってカレさんから貰った招待状を手渡した。男性はそれを読み進めるうちに、顔にどんどんと冷や汗をかいているのが見てとれた。
「アニマリルの英雄でしたか。大変なご無礼をおかけしました。アニマリルでの実績もありますので、入国はOKです。もちろん入国費も必要ございません。ただ、隣国の紹介ということもありますので、ショコラ様には報告させていただきます」
入国審査官はそう言って門を開けるとジェシカさんは馬車に乗り込む。
「それじゃあ二人とも、私とはここでお別れね。アニマリルを出てからの二日間もすごく楽しかったわ。二人がこれから先の旅も平和で過ごせることを願っているわ」
ジェシカさんはそう言って馬車を走らせ始める。私たちは手を振って見送った。
「それじゃあ私たちも行きましょうか」
「うん!」
私はガーちゃんから差し出された手を握ると、シュガリーへと足を踏み入れた。




