負けた白と新たな白、白は何色でもある
アニマリルから北へと進んだ先の森の中、クルーリ・テンペスタは命の灯を小さくと燃やし、なんとか生きながらえていた。
「あんな、魔法のまの字もわかってなさそうなガキに、私は殺されるのか」
クルーリは大きな岩に背を任せ、ただ静かに、深く呼吸をするしかなかった。
アニマリルでカンナから受けた傷はそれほど大きいものではなかった。だが、問題は彼女が使っていた毒の王の能力だ。
彼女は自らの炎に毒を付与していたことにより、体をコウモリへと分裂させるというクルーリの奥の手すらも貫通するダメージを与えており、クルーリの命を着実に削っていた。
「こんなところにいましたか、役立たず」
そんなクルーリの元へ茂みを切り払いながら近づいてくる人物がいた。
「ミラ・ディアゴスティーニ」
クルーリにそう呼ばれた彼女は、ミラ・ディアゴスティーニ。同じく王の国で王に仕えている。いわゆる同期というやつだ。女子高生の制服のような服装に、黒い丸眼鏡をして本人は目立たないようにしているようだが、白く美しいショートカット姿は、その幼い顔立ちも相まって、まるで天使のような存在感を放っていた。
「役立たずに名前呼ばれるとかきもい」
「君は、相変わらずだね。どうしたんだい。もしかして、私を助けに来てくれたのかい?」
「その逆、始末しにきた。あんたが役に立たないから王はお怒り。役立たずの変わりはいくらでもいる」
ミラはそう言ってほっぺをぷっくりと膨らませた。
「ま、待ってくれ。治療さえしてくれれば次は必ず王の証を手に入れる。なぁ、頼む」
「そういうところ、ほんときもい」
ミラはそう言ってクルーリの体を何度も何度も踏みつけた。
「はぁ、すっきりした。で、なんで役立たずはこんなにボロボロに負けてるのかな」
ミラがクルーリを踏みつけて数分後、ようやく満足したのか、それとも飽きたのか分からないが、ミラは疑問に思っていたことをクルーリに尋ねた。
「私だって好きでこうなっているんじゃない。私が訪れる国には全て炎のガキがいるんだ」
「人のことそうやって読んでるのきもい。それで?」
「そいつは、魔法の知識もほとんどない癖に感覚だけで魔法を使ってくるんだ。それと一緒に旅してる女もやばい。あいつはまともに使える魔法が補助魔法しか無いっていうのに、その効果が馬鹿げてるんだ」
「男の癖に女に負けてるとかきもい。でも、少し気になる。私が次に行く国に来ないかな」
ミラはクルーリの話に胸をときめかせながらそう言った。
「本当にやめておいた方がいい。あいつらは本当に、うわ!」
クルーリの話してる途中でクルーリの目の前に大きな鏡が現れる。
「おしゃべりはこの鏡として。役立たずの話はきもいから聞きたくない」
「この鏡、もしかして鏡の国ミラーインダーの王の証」
「私はあなたに最後の忠告をするように頼まれただけ、これは置いておく。次失敗したら許されない」
ミラは薬など諸々を置くと、そう言い残して森の中を再び進み始める。
「次の国に来るかな。シュガリーで会えるといいな」
ミラは手元に出現させた手鏡をくるくると回しながら不敵な笑みを溢した。




