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茂る茂みを超え、旅は続く

「カナちゃん、また誰にも言わずに出ていくんですか?」


朝方、旅立ちの準備をしている私に、ガーちゃんは悲しげな声色でそう声をかけてきた。


「うん、やっぱりどうしても別れっていうのはなれなくて。だから旅立つときには誰にも会わないよ」


私はそう言って荷物を背負うと、泊まらせてくれたジェシカさんへの手紙をリビングの机の上に置き、私たちは家を出た。


まだ日が昇り始めたばかりのアニマリルの街には誰もいなかった。私たちは静かに、だけど足早に門を目指していく。


「アニマリル、いい国だったな。次の国、確かスイーツの国だっけ?」


「はい、アニマリルから更に北の方向に進んで行った先にある国、スイーツの国シュガリーですね。私も訪れたことは無いんですけど、世界中のお菓子職人が一度は修行に来るスイーツの聖地みたいな国だったはずです」


スイーツ、つまりはお菓子ってこっとだよね! この世界にはどんなスイーツがあるんだろう! でも今までの感じあんまり名前とか料理に変化は起きない気もするんだよね。尚更あの頃のスイーツをもう一度食べれるチャンスじゃん!


「カナちゃん、ニヤニヤしながらよだれも垂らして、みっともないですよ」


ガーちゃんからの指摘で私はハッと我に返る。


「いけないいけない。美味しそうなスイーツを想像してたらよだれ出ちゃった」


「確かにカレさんのご厚意で入国にお金はいりませんし、着いたらスイーツ店巡りをしてもいいかもしれませんね! このところバタバタしっぱなしでしたし!」


「いいねそれ! それじゃあデートだね!」


ガーちゃんの提案に私が答えると、ガーちゃんはどんどんと顔を赤くし始め、まるでゆでだこのようになってしまった。


「ガーちゃん!? 私まずいことでもいったかな?」


「いえ、カナちゃんが少し天然さんなのを忘れていただけです。そうですか、こういうのはカナちゃんの中ではデートということになってしまうんですね。危うく私の心臓が破裂するかと思いましたよ!」


ガーちゃんは顔を赤く染めたまま、私のことをぽこぽこと殴る。それがなんだかくすぐったくて、嬉しくて笑ってしまう。


「もー笑い事じゃないんですよ。ほら、門が見えてきました。アニマリルとバイバイですよ」


ガーちゃんは話題を逸らすように門へ指を指した。


「やっぱり来ると思ったのだ」


すると門の方から聞き覚えのある声が聞こえる。


「シゲル! カレさん! どうして」


「恩人を見送るのは当然なのだ」


「シゲルのいう通りだが、シゲルが昨日あんなにだだをこねるからというのもあるがな」


「それは言わない約束なのだ!」


自身満々だったシゲルも、恥ずかしそうにカレさんに怒っている。


「でも、二人が来てくれて本当に嬉しい。あぁ、楽しかったな」


私の頬に熱い何かが流れる。


「そんなに喜んでくれて、王として本当に嬉しいのだ。そんな二人に、僕から細やかなプレゼントなのだ」


シゲルはそう言って何かを包んでいる風呂敷を手渡してくれる。


「結構重たいねこれ。何が入ってるの?」


「実はアニマリルでは自然が多いことを利用して、木の実や野菜の栽培も盛んに行われているのだ。瓶の中に焼きジンニンが一口サイズに切って入っているのだ。二人分風呂敷に包んでおいたのだ。冒険中は栄養が偏りがちだからしっかり食べて元気出すのだ」


「と、私が朝教えたことを言っているだけなんだがな」


カレさんは頑張って説明したシゲルを笑うようにそう言った。この人も親として結構すごいことするな。めちゃくちゃ心に刺さるよ今の一言。


「ありがとう。大切に食べさせてもらいます」


「それじゃあ、また会えることを祈って」


私は二人にそう言って門へと歩き出す。


「さぁ、乗ってちょうだい」


「ジェシカさん!?」


門の手前に止まっている馬車から声がしたかと思うと、そこにいたのはジェシカさんだった。


「どうしたんですか。しかもこの馬車」


「これは私の友人達よ。ほら、私って馬の中では顔広いから」


確かにジェシカさんの顔が大きいことは知ってるけど。でもきっと言ったら殺されそうだから言わないでおこう。


「私もちょうど頼まれごとでシュガリーに行く用事ができたのよ。だから二人とも乗りなさい」


「いいんですか? ジェシカさんはお仕事でシュガリーに行かれるわけですし」


ガーちゃんは心配そうにそう尋ねる。


「いいのよ。困った時はお互い様よ。ほら乗って乗って」


私たちはジェシカさんの勢いに負けて馬車へと乗り込む。


「それじゃあ、行くわよ」


ジェシカさんはそう言って鞭を打つと馬車はゆっくりと走り出す。


「二人とも気をつけていくのだ! またきっと会おうなのだ!」


シゲルは門の外ギリギリまで走ってくると、泣きながら大きな声でそう叫び、私たちが見えなくなるまで手を振ってくれた。私たちもそんな姿が嬉しくて、ずっと手を振り返していた。


アニマリルの外はやっぱり茂みが茂っていて、どこか懐かしい気持ちになった。

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