さらばアニマリル!次なる国への切符
宴を終えて数日は、ジェシカさんが泊めてくれるということで、ジェシカさんの家でお世話になった。
戦いは終わったとはいえ、国自体の復旧には、まだまだ時間がかかりそうだった。私たちも戦いによる疲労や、そもそも次の国すら決めていないこともあって、アニマリルの復興の手伝いや冒険者ギルドに依頼の達成を伝えたり、今後の旅の予定を考えていた。
「お嬢ちゃんたち、あなたたちにお客さんよ」
ジェシカさんが私たちにそう投げかけてきたのは、その日のお昼ごろだった。
「カレさん!? どうしたんですか?」
尋ねてきたのは王であるカレさんその人だった。この人、復興とかで忙しいんじゃないのかな?
「急に訪れてしまってすまない。明日、何か用事があったりするかい?」
「特に予定っていう予定はないですけど。どうかしたんですか?」
私はカレさんに思っていた疑問を問いかける。これまでも一緒に作業自体はしていたけれど、こうして尋ねてきたのは初めてだ。
「明日、戴冠式を行おうと思ってだね。是非とも二人にも参加してほしいんだ」
「戴冠式! ってなんだっけ?」
「もーカナちゃん。戴冠式っていうのは、王様が次の王様に冠をかぶせる。つまり、カレさんからシゲルさんに王が変わると言うことです」
私が頭にはてなを浮かべていると、ガーちゃんが後ろから現れ、戴冠式の説明をしてくれる。
「王様が、変わる」
「私が抱えていた問題も解決した。これからはシゲルがこの国を背負っていく。世代交代というやつだ」
カレさんはどこか嬉しそうで、でも悲しそうな顔をしてそう言った。
「明日、絶対に行きます!」
私は思わず元気にそう答えてしまった。歴史的瞬間に立ち会えるという気持ちと、カレさんに少しでも元気になってもらいたいという気持ちが、言葉となって溢れてしまった。
「ありがとう。ではまた明日楽しみにしているよ」
カレさんはそう言ってジェシカさんの家を後にした。
その日の夜は、緊張とドキドキで中々寝付くことができなかった。そのせいもあってか、ガーちゃんにいくら読んでも起きないと怒られてしまった。
そして今は、城へと走っている真っ最中だ。
「だから早く起きてって、言ったんですよー!」
ガーちゃんはハァハァと息を上げながら必死に走っている。という私も走っている。
私の寝坊のせいで、式典の開始時刻ギリギリだ。
「ごめんって。でも昨日全然寝れなかったんだもん」
「もう知りませんよ。起こしたんだから起きてくれない方が悪いんです!」
ごもっともなことを言われてしまった。
「いや、きっと間に合うよ!」
私たちはグッと力を込めて走る速度を上げた。
「遅いのだ!」
私たちの前で王冠を頭の上に乗せたシゲルからお怒りの言葉を受け取った。
私たちがつく頃には戴冠式が終了しており、城前で記念のパーティーが行われていた。
「来てくれるって言うから楽しみにしてたのだ。なのにこれはどういうことなのだ!」
「いやぁ、少し、寝坊しちゃいまして」
「そんなこと許されないのだ!」
シゲルの怒りは収まるどころか増すばかりだ。
「まぁまぁ、シゲルだってよく寝坊して試験をすっぽかしていたじゃないか」
「ゲッ、お母さま。それは違うのだ」
カレさんの声が聞こえてくると、シゲルはすっかり黙ってしまった。
「二人に、改めて感謝を伝えたい。きっと君たちがいなかったらこの国は無くなっていただろう。本当に感謝してもしきれないほどだよ」
「そんな。私たちはその時できることを、やるべきことをしただけですよ」
そんなにいろんな人から褒められると、照れくさくて顔も赤くなってしまう。
「お礼と言っては何なのだが、これを君たちに上げようと思ってね」
カレさんはそう言うと、白い封筒を1つ渡してきた。
「次の行先が決まっていないと聞いてからね、ここは一つ招待状を書いておいた」
「そんな、わざわざ申し訳ないですよ」
ガーちゃんは申し訳なさそうな顔でそう言う。招待状って、何の?
「これは隣国のスイーツの国シュガリーへの招待状だ。貿易などを通して仲良くさせてもらっている。この招待状を持っていけば、入国時にお金を取られる心配はないだろう」
「何から何までありがとうございます。スイーツの国を経由すれば、次は魔法の国に行けます。もうすぐだよカナちゃん」
ガーちゃんは嬉しそうに私にそう言う。
魔法の国で強くなる。その気持ちは今回の騒動でより強く思った。今回は毒の王の証があったからよかったけど、私とガーちゃんの力で勝てない敵はきっと沢山いる。早く強くならなくちゃ。
「そうだね。じゃあ明日、出発しよう」
「え、別にかまわないけど。結構急じゃない?」
ガーちゃんは私の言葉に驚いたような顔をしていた。確かに、少し急すぎたかもしれない。けど、私はガーちゃんを守れる力が早くほしい。大切で、大好きで、誰にも渡したくないガーちゃんを守れる力が。
「寂しくなるのだ。またきっと遊びに来てほしいのだ」
「うん、絶対また来るよ! その時にはきっともっといい国になってると思う」
私は悲しい顔をするシゲルを慰め、そのままパーティーに参加する。
私の決意は変わらない。
でもやっぱりちょっとだけ、まだ離れたくない気持ちが芽生えてしまったのも事実だった。




