静かになった森の中で新たな国の日が昇る
「カナちゃん! カナちゃん!」
私はガーちゃんの必死の呼びかけに目を覚ました。どこか柔らかい感触を頭に感じる。目を開けた先には涙を浮かべるガーちゃんの姿があった。
「カナちゃん! ほんと、よかった」
ガーちゃんは私が目を覚ましたことで安心できたのか大粒の涙をボロボロと溢している。
「ガーちゃん、ごめんね。心配かけちゃった」
私はゆっくりとガーちゃんにそう言葉を紡ぐ。少し周りの状況が分かってきた。私、膝枕してもらってるんだ。
「本当ですよ。王の証を使うなんて、もうめちゃくちゃですよ」
「あはは、それは私も思う」
ガーちゃんからのお叱りの声に、私は苦笑いするしかなかった。
「終わったんだね」
「カナちゃんが終わらせたんですよ」
ガーちゃんはそう言ってくれるけど、私にはあまり実感が無かった。むしろ、さっきまで吹き荒れていた風がぴったりと止んでいて、空を覆いつくしていた分厚い雲も、その姿を消してしまっていた。
「私、夢を見てた。そこでシビレンさんに会ったんだ」
「シビレンさんですか?」
ガーちゃんは少し驚いたような顔で、私を見つめる。
「うん、王の証を頼むって。代理の王として任命するって言われちゃって」
「王の代理!? とんでもないことですよカナちゃん!」
「私もびっくりしてる」
私は自分が首から下げているペンダントを手に取って眺める。王の証は、沈もうとしている暁色の夕日を反射して、キラキラと輝いている。
「シビレンさんと少し話せてよかった」
「カナちゃんのこと、信頼してくれたんだね」
私はガーちゃんからのその言葉が嬉しくて、少し涙ぐんでしまう。それがバレないように、私は急いで立ち上がった。
「それじゃあ、この後どうしよっか」
私は純粋な疑問を言葉にした。もう日が沈み、時期によるが来る。そんな時に城は半壊状態だ。これじゃ、城で寝泊まりするのは難しそう。
「カンナ、ガーネット。2人の協力、大いに感謝する。報酬と言っては何なのだが、あれを見てもらいたい」
カレさんがこちらに歩み寄りながらそう言うと、私たちに半壊した壁の外を見るようにと促した。
「え、なにこれ、すご」
そこから見える景色には、巨大な木々を組んで作ったキャンプファイヤーにを囲んで、アニマリルの人も動物も笑顔で騒いでいる姿だった。
「君たちには、後日ちゃんとしたお礼を送ろう。まず今日は、アニマリル国民一同、君たちに最高の宴をプレゼントするよ」
私は感動か、それとも喜びか。分からない気持ちだが、言葉が出なくなってしまった。
「カナちゃん。せっかくですから、早く行きましょ!」
ガーちゃんは私の手を強く握ると、穴の開いた壁へと走り出す。
「ガーちゃん、嘘でしょ!? まさか飛ぶとか言わないよね! ってもう飛んでる!」
ガーちゃんは勢いよく私の手を握ったまま壁から飛び出す。
「うっそおおおおおおおおおおおおお落ちるうううううううううううううう」
私は必死に手をパタパタと動かすが、飛べるわけもなく落下を続けている。
「おっと、ナイスキャッチ」
だが、私たちの体は、何か柔らかい大きなものによってキャッチされた。
「ブルーラ! もう大丈夫なの!?」
そう、その青く美しい体は、先ほどまで大暴れしていたブルーラだった。元気そうな雰囲気はないが、動けるといった感じだった。
「迷惑をかけてしまってすまない。私がずっとムキになっていなければ、こんなことにもならなかっただろうに」
ブルーラは申し訳なさそうな声でそう告げると、私たちをゆっくりと地面に下してくれた。
「私は今日この光景を見てやっとわかったのだ。人と獣。いや、全ての生物は共存できると。我々四聖獣の不毛な争いのせいで、誰もが見えなくなっていた。本当は、皆が笑える国を作りたい。その思いは一緒だったはずなのに」
「誰だって間違いますよ。でも、それに気が付けたのなら、きっともう大丈夫ですよ。アニマリルは、本当にいい国です」
「他の国から見た君たちがそう言ってくれるのなら、変われたのかもしれないな。この国も生まれ変わる。時間や状況に合わせて国は変わっていかなければならない。きっと、新しい王が、よりよいアニマリルを作ってくれると信じている」
そう言ったブルーラの視線の先には、様々な種族と笑いあうシゲルの姿があった。
「あら、二人とも、まさかこの国を救う英雄になっちゃうなんて、すごいじゃない!」
すると、どこからか聞いたことのある声が聞こえる。
「ジェシカさん!」
そこには可愛らしい赤いリボンを付けた毛並みの整った二足歩行の馬、じんにん焼きの店主、ジェシカの姿があった。
「あなたたちすごい人だったのね! さぁさぁファイヤーの近くまで行くわよ。みんなあなたたちのことを待ってるんだから」
私たちはジェシカさんに連れられて宴の中心地へと向かった。
それからの出来事はあっという間で、決戦の話で盛り上がったり、みんなの一発芸の披露だったり、お酒の一気飲み対決を見たりとどんちゃん騒ぎ。
戦いの疲れなんて忘れてしまうくらい盛り上がった。
「カナちゃん、もう朝です。あっという間ですね」
「そうだね。最高に楽しい夜だった」
アニマリルの国民すべてを照らすその美しい日の出は、新たなアニマリル誕生の象徴のように思えた。




