腹が減っても戦はする
「でかぁぁぁ」
私は目の前に立っている魚の銅像に思わず叫んでしまった。
「これ私の身長の3倍くらいあるんだけど!どゆこと」
銅像にはしゃぐ私の姿を見てクスッとガーちゃん笑う。
「この銅像は実際にフィシュタニアで採られている名産のマガロという魚だそうですよ」
ガーちゃんは銅像の下の台座に書かれた説明書きを呼んでくれる。
てかマガロってなんだよ。マグロみたいなもんなのか?なんかそうやって言われてみるとすげぇでかくなったマグロみたいな見た目してるけどさこいつ。
「早速食べに行こ!ガーちゃん私は腹ぺこだ!」
転生してからというもの何も食べていない。さすがに少しお腹がへった。
「待ってください!」
ガーちゃんは私の右手を掴みそう言った。
「私たちお金を持ってませんよ」
肝心なところを忘れていた。私たち何も持たずに外に追放されたんだった。
「私たちもしかしてこの国に入れない感じ!?もう旅終わっちゃうよ!?」
転生してこんな早く死ぬやつとかいないよ!?私が見てきたなろうはこんなではなかったのに!
「あの、すみません」
2人して頭を抱えていると後ろから気弱そうな女性の声がした。
「あ、邪魔でしたか?すみません今どきますからここ門に続く道ですもんね」
私たちが慌てて道を避けようとすると彼女は叫ぶようにして言った。
「あの!ぼ、冒険者の方々ですよね、?私の、私の家族を助けてくれませんか?」
「冒険者なのはあってるけど何があったの?私たちで良かったら話聞くよ」
もしかしたら助けたら何かしてくれるかもしれないし、それに暇だし。
「ありがとうございます!実は、数日前からフィシュタニアが何者かに襲われているんです」
「なんですと!?」
なんか変な声が出てしまった。
「詳しく聞いてもよろしいですか?」
ガーちゃんはこういう時も冷静ですごいなぁちゃんと相手のこと考えてるんだな。
「はい、私がこの国を出てからのことです。隣国の王の国へと特産のマガロを売りに出ていました。王の国に滞在してから2日目のことでした。知り合いの漁師が王の国まで逃げてきてフィシュタニアが襲われていると聞かされたのです」
「それで急いで戻ってきたということですね」
「はい、私の娘たちが家に残っていますから心配で心配で」
彼女は我慢していたものが溢れてしまったのか涙をボロボロと流していた。
「娘さんたちは私たちが何とかします」
私は彼女に向かって強く言い放った。
「本当ですか!」
彼女は嬉しそうな目をして私を見てくる。
「ほっておくことなんてできませんから」
「ありがとうございます。ほんとに、ほんとにありがとうございます」
「お名前を聞いてもよろしいですか?」
「私はルアと言います。娘たちをどうかお願いします」
「お腹は空いたままだけどガーちゃんなら何とかできるよね」
「私、補助魔法しか使えませんよ、?」
え、嘘でしょ、?ガーちゃんめっちゃ強い前提で話進めてたよ私。私火の玉出せるようになっただけだからね?
「じゃあ試しにカンナちゃんにかけてみるね」
そうガーちゃんは言って手を合わせる。
「ブースト」
ガーちゃんはそう言って手を私の前の方に出す。すると私の体にみるみると力が溢れてきた。
「おお、なんかすごい力湧いてくる!どりゃぁ」
いつもの感覚で火の玉を出してみる。
「なんじゃこりゃあ!」
自分の身長ほど、大体150cm程の火の玉が頭上に浮かんでいる。
「言ったじゃない。補助魔法は得意だって」
「加減ってもんがあるでしょ!倍率どうなってんのよ!」
「ばいりつ、?はよくわかんないけど自分で出す魔力を調節して!息を吐き出す感じで」
ふーっと息を吐き出してみるとひゅるひゅると火の玉を小さくなっていく。
「なんか、勝てる気がしてきた」
「相手の情報は全然わかってないから慎重にいきましょう」
「ご飯食べるための聖戦の始まりだ!」
私たちはフィシュタニアの門へと駆け出していく。