王の証、確かに受け取った!
「じいさん二人に何ができる!」
クルーリは迫りくるゲブとスザへと拳を構えた。
「フン、本当の姿をお見せしよう」
スザはそう言うと、前髪の赤い毛が光り出す。そして髪の毛全体を赤く染めたかと思うと、スザの姿は大きな鳥の姿へと変化した。その姿はまるで不死鳥そのものだった。
「姿が変わろうが同じことだ」
クルーリは燃え盛り突撃してくるスザを掴むと、炎など気にせずに首元に噛みつこうとする。
「させるわけなかろう」
ゲブはクルーリの背後から近づくと、巨大化させた孫の手を振りかざす。
「うざいんだよ」
クルーリはくるりと向きを変えると、ゲブから放たれた一撃はスザへと命中した。
「大人しく王の証さえ渡せばいいものをよぉ」
クルーリは沸々と湧き上がる怒りを込めながらスザを壁へと投げ飛ばす。
「何もしないあんたのせいでみんな傷ついてんだ。王様失格だな」
クルーリはカレへそう叫ぶと孫の手の先を蛇状に変化させたゲブを蹴り飛ばした。
「おいおい、そんな絶望した顔すんなよ。最高だろ? お前が招いた未来だ」
クルーリはカレへとコツコツとゆっくりと、だが確実に近づきながらそう言い放った。
「さぁ、王の証を渡せ」
カレはシゲルを抱えたまま震えていた。それは過去見たものと酷似した光景だったからだ。
三百年前
「お父様!」
先代アニマリル王、アンダーは反乱軍のボスによってカレの目の前で命を落とした。
血を吹き出しながら目の前で無残な死を遂げそうな父を見て、カレは初めて心の底からの恐怖を覚えた。
「お父様、お父様」
カレは自分が殺されるかもしれないという気持ちよりも、父を失ってしまうことが怖かった。これまで生きている中でどんな時も傍には父の存在があった。そんな父がいなくなってしまったら、自分はどう生きて行けばいいのか分からなくなってしまうと思ったからだ。
「貴様、よくもアンダーを!」
幸いにも、駆け付けたゲブによって反乱者は拘束されたが、アンダーの命はもうつきようとしていた。
「カ、レ。これまですまなかった」
アンダーはゆっくりと、だが確実に言葉を紡いでいく。
「嫌だ、謝らないで。死なないで」
カレは倒れてしまっている大きな父の胸で泣いていた。
「お前に、これを託す。カレ、もう私のような被害者を出さない。差別のない平和なアニマリルを、どうか、頼ん、だ」
アンダーはポケットから取り出した王の証と王の座をカレに託すと、叶えられなかった平和なアニマリルの誕生を願い息を引き取った。
カレはそれからしばらくの間。部屋に籠り泣きじゃくった。
父が死んだことを受け入れられず、そして王という突然任された大きすぎる称号に、カレのメンタルはとっくに壊れてしまっていた。
だが、父からの頼みである平和なアニマリルを作るため、数百年という長い時間をかけてアニマリルを発展させていった。だが、根本にあるあの時感じた恐怖など、消えるはずもなかった。
戦ったこともまともにないカレはブルーラやクルーリと戦うことすらできなかったのだ。
自分が王としての資格もなければ力もないとわかっていたカレは息子であるシゲルには1人でも戦えるように、王として生きていけるようにと勉学や試練を与えていた。
そしてカレが戦えなかった敵にも勇敢に戦いを挑んでいったのだ。
カレは思った。シゲルはもう王になる資格があると。
「お母さま、渡しちゃ、ダメなのだ」
「まだ息があったかクソ王子」
カレの目の前に立ったクルーリは、抱えられているシゲルに拳を振り下ろす。
「やめろ!」
カレは王の証で虎化した拳をクルーリの腹に叩き込むと、クルーリは反応しきれないまま壁へと吹き飛ばされていった。
「シゲル、あなたは私より力が無いかもしれない。でもね、私より気持ちは強い」
「お母さま」
シゲルはゆっくりと立ち上がると、カレは話を続ける。
「この王の証をあなたに託します。今のあなたなら、きっとこの国の危機を乗り越えることができる。私たち獣人だけではない。動物も一緒に、この危機を乗り越えるのよ」
カレはネックレスをシゲルの付けると、シゲルは瞬く間に光に包まれた。
「く、なんだこれは」
クルーリは見たことの無い現象に施行を回転させる。
「す、すごいのだ」
シゲルのボロボロだった服はまるで甲冑のような装甲へと変わり、両手は人の腕の形を残しながらも白き毛並みと鋭い爪を伸ばしていた。
「これが、王としての証、なのだ」
「誰が持とうがそれは貰っていく!」
「「ちょっと待った!」」
新たなる姿となったシゲルへとクルーリが襲い掛かろうとした矢先、まるで結婚式の乱入のように現れたのは、カンナとガーネットの姿だった。
「クルーリ・テンペスタ! フィシュタニアでの借りは返しに来た!」
カンナは人差し指をクルーリに突き刺し、そう叫び宣言した。




