王の子コソコソ虎視眈々
とてつもない轟音と共に、アニマリルの城に穴が開いた。
「遂に来てしまったか。ブルーラ」
玉座の後ろの壁はぽっかりと穴が開いていて、曇っている空が良く見えた。
「カレ様、おさがりを!」
様々な動物の兵たちが玉座のある部屋までやってくると、そう言ってブルーラへと剣を向けた。
「どいつもこいつもばかばかり。お前らが勝てる相手ではない。お前たちは街の住人、及び森にすむ動物たちの避難を優先しろ。これは私と私の父の問題だ」
兵士たちは、「でも……」と不安そうな声を上げるが、王であるカレの命令であるため、急いで街や森へと向かっていった。
「さて、私一人になったところで、どっちからやる? 二人まとめては流石にきついからね」
「おおっと、バレていましたか。流石は獣の国の王と言ったところだ」
カレの問いかけに答えるようにそう言葉が返ってくると、ブルーラの上から一人のクルーリが降りてきた。
「ほう、吸血鬼が何かようかい?」
カレの発言に、クルーリは少し動揺しながらも、平然を装って話を続ける。
「やはり王様はすごい。私の正体に初見で気づいた人は君で4人目だよ」
クルーリは笑いが止まらなくなり、大きく高笑いをする。
「すごい王様には敬意を払わなければ。私がここに来た目的はこの国へと逃げ込んだ毒の国の王の証をいただくこと。もう一つはこの国、アニマリルの王の証をいただくこと。これが私がここに来た理由だ」
「ほう、それはまた許せない頼み事だ。嫌だと言ったらどうする?」
カレは強いまなざしをクルーリへと向ける。
「力づくで奪うまで」
クルーリはにやりと笑って五人に分身すると、カレの方へと走り出す。
「奪えるものなら、奪って見ろ。これは王たる証だからな」
首からかけているネックレスに付いている王の証と、紫色の瞳が光ると、カレの腕と脚は白い毛で覆われ、虎のような手足へと変化し、白い尻尾が生える。
「これがアニマリルの王の力、是非ともあの方の領土にしたいものだ」
クルーリはそう言って五人同時に仕掛ける。
「ブラッディ・ソード!」
クルーリは自ら口の中を噛んで血を出し、それを吐き出す。すると吐き出した血は剣へと姿を変える。
「ふ、遅いわ」
だが、カレはクルーリの攻撃を上に飛び上がり、いとも簡単にかわしてしまう。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
カレが落下時の勢いで攻撃しようとしたところ、ブルーラが大きな声を上げて翼を羽ばたかせ強風を起こす。カレはその風に吹き飛ばされ壁にぶつかってしまう。その勢いで城の壁はゴロゴロと落ちている。
「ブルーラ、何故喋らない」
カレは疑問をブルーラへとぶつけるが返ってこない。
「無駄だ。ブルーラは今となっては私の道具に過ぎない。意志は無くなったさ」
クルーリはニヤニヤとしながらそう言った。カレは力が抜け、膝から崩れ落ちる。
「お前、何をした」
「王のくせに、心は弱いのか? 最初あんたが言ったんだろ? 吸血鬼だと。このドラゴンも一緒さ。どれだけ凄くても俺に操られちゃただの人形さ」
クルーリは「やれ」とブルーラへと指示するとブルーラは城の中へと突っ込もうとしてくる。
そんな様子を、ずっと壁の小さな穴から覗いている人物がいた。
「ど、どうなってるのだ。城がボロボロなのだ。あんなお母さまの姿、見たことないのだ」
それは隣の部屋で勉強をしていたシゲルだった。だが、シゲルはカレの過去を知らない。それでもシゲルはあんなに元気のないカラを見るのが初めてだった。
「このままじゃ、城も国も、お母さまだって死んじゃうのだ。そんなの、そんなの。僕は嫌なのだ!」
シゲルは部屋の中に飾ってあった自分で作った骨の剣を握りしめ、部屋を飛び出すと、カレの前に立ち、ブルーラとクルーリに剣を向ける。
「ここからの相手は、僕がするのだ!」
泣きそうな目をうるうるとさせ、恐怖で震える足を頑張って踏ん張ってそう叫んだ。




