竜と影の協奏曲(ドラゴンシャドーダンス)
クルーリ・テンペスタは、ざわめく森の中を一人歩いていた。
「国の証を貰うまでは、逃がしませんよ。毒の王シビレン」
体を毒化させ、液体となり国外へと逃亡したシビレンだったが、彼の体の特性が故に、通った道の草木や動物は、枯れ果てて動物は死んでしまっていた。
クルーリにとって、弱った相手を道順に追いかけることなど、おつかいなどよりも簡単なことだった。
「さて、都合がいいことに次の目的地であるアニマリルにたどり着くなんてね。それにしても森が騒がしいな。この様子じゃ深い森の中には逃げられまい。私も少し気になることができた。もう少しだけ生かしてやろう」
クルーリは、そう溢すと、森の奥、ざわめきの中心へと影を伝い歩いていく。
「オヌシ、ナニモノダ」
十分ほど歩いただろうか。クルーリの目の前には青色の皮膚をし、ゴツゴツと硬い翼を今にも羽ばたかんとする大きなドラゴンがそこにはいた。
「ドラゴンとは珍しい。太古の昔に竜の国、この大陸から遠く離れた地へと移動したと思っていたのだが、まさか生き残りがいるなんてね」
「ナニヲイウ。ワレハコノモリノ、シハイシャゾ」
「この森を支配してようが勝手ですが、私の邪魔だけはしないでください」
「ワレガスベテキメル。オマエハココデシヌ」
そう言ってドラゴンが吠えると、たちまち空は暗くなり、雷鳴が空を翔けた。風は先ほどまでとは比べ物にならないほど吹き荒れ、並みの人間では立っていることすら困難だろう。
「面白い。あなたを利用させてもらいますよ」
クルーリはそう言って翼を広げると、空へと舞い上がる。
「クダラヌコトヲイウナ」
ドラゴンも大きな翼をわさわさと動かし、幾年被りの空へと飛びあがる。
「さぁ、どちらの国の証も貰いますよ」
クルーリはそうにボソリというと、アニマリルへ向けて進み始めた。