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シンボル!登録!雷鳴轟く!

「で、出られないってどういうこと!」


私はその衝撃的な発言に思わず強く食いつく。私の腰ほどの高さしかないヒカゲに、私はかがんで顔を近づけた。


「そのままの意味ですよ。森が叫び続ける限り、お二人だけではなく我々アニマリルの住人も出ることはできないのです。おとなしくこの国にいることが命のためです」


「そんなぁ」

 

私はガクンと膝をつく。まさかアニマリルに閉じ込められることになるなんて。そもそも私たち宿に泊まるお金すらないのに。


「ヒカゲさん、森の叫びは何日ほどで終わるのですか?」


ガーちゃんはヒカゲさんに再び尋ねる。シゲルはお腹いっぱいになった穴化をポンっと叩いている。


「そうですね。早くても一週間、長ければ一か月ほどはかかることになると思います」


「そうですか……困りましたね。私たちお金がない状態でして、何とかこの国で冒険者登録をして稼がなきゃいけないんです。国から出られないということは依頼の量も減ってしまいますし宿もありませんから、どうしたものでしょう」


「ん? 宿に困っているならうちに泊まるのだ?」


食事に満足そうな顔をしたシゲルは思いつめたガーちゃんを見てそう言った。ヒカゲは少し焦った顔をしている。


「王子。王に報告もなしに決められるのは困ります。これまで何度も怒られてきたではありませんか」


「泊めると言ったら泊めるのだ。そうと決まれば行くのだ」


シゲルはそう言ってレジへとかけていく。私まだ全然食べてないんですけど? ヒカゲは「はぁ」とため息をつくと、シゲルの元へと向かう。私は卵焼きを急いで喉に流し込むと、ガーちゃんと共にシゲルの元へと向かい、この店を後にした。


「見るのだ。あれがこの国のシンボルにして城の、レオキングダムなのだ」


シゲルは店を出て左手に見える大きく聳え立つ城を指さした。おとぎ話やファンタジー世界でよく見るお城とそんなに変わりはないのだが、一つ変わっているところがあるとすれば白の真ん中に大きなライオンのような生物の彫刻が彫られていることだろうか。


「城は街を抜けた先にあります。冒険者登録をなされるなら先に済ませてしまった方が後々楽でしょう。ついて来てください。案内します」


私たちはそんなヒカゲの言葉に甘えることにして、ヒカゲの後をついていく。


「ここが冒険者ギルドですよ。私たちは外で待っていますのでお二人はどうぞ登録の方を済ませてきてください」


「えー僕も入りたいのだ」


「あなたが入ると騒いで迷惑をかけるでしょう。王子の騎士である前に教育役である私がそんなこと許すわけがないでしょう」


ヒカゲがシゲルのわがままを何とか抑えながら、ヒカゲに見送られて私たちは冒険者ギルドへと足を踏み入れた。


中に入ると、一瞬中にいる冒険者の視線が私たちの方へ向く。ギルド内にはガタイのいい獣人が多い。そんな中に女子二人なのだからアウェー感がすごい。


「ようこそ冒険者ギルドへってガーネットちゃん!?どうしたのよこんなところまで」


どうやらギルドマスターはガーちゃんの知り合いらしい。流石元ギルドマスター。


「アドベントで会った時以来ですね。ギルドマスターの仕事の方は大丈夫なんですか?」


「それが、私たち王の国から追放されてしまったんですよ。ですから改めて冒険者登録をしようと思いまして」


ガーちゃんがそう説明すると、「なるほどなるほど」と彼女は栗色のボブカットを揺らしながら答えると、後ろの棚から石板を取り出した。


「ではこちらの石板に手をかざしていただくと冒険者カードの発行が完了しますのでお願いします」


一見なんの変哲もない手のひらが収まる程度の大きさの石板だけど、石板の真ん中には見たことのない魔方陣が描かれていた。


やっぱり異世界の冒険者登録ってこういう石板に手をかざしたら光っちゃう的なやつなのか!


「こちらの魔方陣で個人を認識するんですよ。これも魔法の研究が進んだおかげなんです。おかげで国同士での管理が数十年前より何倍も楽になったんです」


ギルドマスターは目を輝かせながら石板のすごさについて語ってくる。すごく暑苦しい。


「あ、すみません申し遅れてしまいましたね。私はアニマリルのギルドマスターのズーといいます。ガーネットちゃんとは研修時代からの仲なんですよ。お仲間さんも冒険者登録ということでよかったですよね?」


「は、はい大丈夫です」


何だろう。ズーさんすごいグイグイ来るせいで距離感がつかめない。


私は言われるがまま石板に手をかざすと、石板は赤く光りだす。


「炎魔法の適性がすごく高いようですね。ここまで石板が綺麗に光ることも珍しいです」


これもしかして私主人公なやつ? 魔力高すぎて測定不能で壊しちゃうやつかも。でもそれだとガーちゃんの登録できなくなっちゃうから困るなぁ。


「はい、登録完了しました。カードは無くさないように管理してくださいね」


ズーさんは私に銅色のカードを手渡した。その流れでガーちゃんも石板の手をかざす。


「これが冒険者カードかぁ」


「それがあると入国の時のお金が免除されたりお得な機能もあるんですよ」


私が嬉しそうにカードを眺めていると、少しほほえましそうにガーちゃんがそう説明してくれる。そういえばフィシュタニアもアニマリルも騒ぎが起きていたから入れていただけで普通はお金かかるよね。


「ガーネットちゃんも登録完了です。これで晴れて二人とも冒険者なわけなんだけど、ごめんね。時期が時期なのもあって依頼の数が少ないんだよね」


ズーさんは依頼が張られている壁を見ながら私たちにそう溢す。確かに壁にはほとんど依頼が張られておらず、半ばギルド内が酒場と化していた。


ゴロゴロゴロッ!!!!!!!!!!!


とてつもなく大きな雷の落ちる音が響く。


「本格的に森が叫ぶよ」


ズーさんは苦渋を飲むようにそう溢した。




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