茂る茂みの中のシゲル
「数日ぶりだけど森も中々悪くないね。空気が美味い!」
私はガーちゃんの隣を歩きながら大きく息を吸う。それを見てガーちゃんはふふっと笑う。知らないところに行くって小さい頃から楽しみなものだし、異世界に来ても変わらないんだなぁ。
「アニマリルまでは歩いて三日ほどの比較的近い国なのですが、やはりこれからのことを考えるとせっかくの獣の国ですから馬車なんかが手に入るといいですね」
ガーちゃんからの提案に私はうーんと首を悩ませる。私たちって旅してるだけで無職だよね?
「そうだね……アニマリルに着いたら冒険者協会に立ち寄って登録済ませちゃおっか」
「アニマリルにも冒険者協会ってあるんだね。ガーちゃんがいたところも冒険者協会だったよね」
異世界ではよく聞く冒険者協会。やっぱり異世界でお金を稼ぐッてなったら冒険者しかないよね!
「そうですね。冒険者協会はこの大陸、グラン大陸の中心にある国『アドベント』が運営している組織でアドベント自体が中立国だからこそ運営できていると言っても過言ではありません」
丁寧に説明してくれるガーちゃん。やっぱりガーちゃんの説明はいつもわかりやすい。
「あれ?アドベントはいつもの何とかの国~的なやつはないの?」
「そうですね。明確に国が出しているものはありませんが、強いて言うなら冒険者の国というのが正しいかなと思います。冒険者にとっては一度は訪れたい国ですから」
冒険者の国、いったいどんなところなのか予想できない。国民全員冒険者とかそんな感じなのかな?
「じゃあアニマリルに着いたら冒険者登録を改めてして資金稼ぎということで決定!」
私は天高く拳を突き上げてそう叫ぶ。私たち二人だけの道はまだまだ先は長そうだ。
森を歩き続けて二日ほど。森はどんどん深くなり、肌がべたつくような湿度を感じるようになってきた。
「蒸し暑いし、植物めっちゃ生えてるし辛い」
「カンナちゃん大丈夫ですか? 今日中には着く予定ですし頑張りましょう」
隣で歩くカンナちゃんが背中をさすりながら優しい言葉をくれる。あー、もう好きになりそう。
「なんか急に植物でかくなってない?」
私は目の前に広がる二メートルはあろう草の壁を見てそう疑問を溢した。これ本当に道であってる? 間違えてないよね?
「道はあっているはずですが」
カンナちゃんは血スト難しい顔をしてにらめっこしながらそう答える。するとその時ガサガサと前の茂みが揺れる。
「何か来る」
私は直感からそう言って身構え、ガーちゃんを後ろに下げる」
「ブースト使っておいた方がいいですかね?」
ガーちゃんは心配そうな声で私にそう尋ねる。
「いや、ここ森だから威力強すぎると自分たちの魔法で焼け死んじゃいそうだからやめとくよ」
異世界まで来て死因が山火事なんて死に切れそうにない。
「た、助けて~」
震える声と共に一人の少年とジャガーが草むらから現れた。
「ファイヤーボール」
私は力を掌に集める感覚で集めた力を打ち出す。すると小さな火の玉がジャガーのような生物に燃え移り、どこかへと駆け抜けていった。
「はぁはぁありがとう。死ぬかと思ったよ」
毛皮の服を着た少年は息を整えながらそう感謝を述べた。見た目だけ見たら原始人の服装といった見た目で、槍なんか持たせたい。もちろん打製石器のやつ」
「君、名前は?」
「僕の名前はシゲル! アニマリルの王子だ!」
緑に茂った茂みは、シゲルの発言と共にざわざわと騒ぎ出した。