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魚の中の冒険者、大海を知らず

「ん、ん~」


私はバタバタとした足音で目を覚ました。体を起こして腕を伸ばす。


「カンナちゃんすみません。起こしてしまいましたか?」


足音が止まってこちらに声が投げかけられる。ふわりと白い髪を揺らしながら申し訳そうな顔をしているガーちゃんからはいいにおいがしてきそうなほどかわいかった。


「大丈夫だよ。こっちこそごめんね? 準備任せちゃって」


「全然大丈夫だよ。私が勝手にやってることだし」


ニコっとこちらに笑顔を向けると再び足音が聞こえ始める。私もベッドから抜けて着替えを始める。朝方の避難所はシーンと静まり返っていて、服がこすれる音が大きく感じる。


「それじゃあ、カンナちゃん行きましょうか」


ガーちゃんからそう言われ、ベッドの上に置手紙を残して部屋を後にする。


「カンナちゃんあれで本当によかったの? やっぱりお別れはちゃんとした方がいいんじゃない?」


「きっと顔合わせちゃったらここにまだいたくなっちゃう気がするからさ」


私はガーちゃんの心配そうな声にそう返した。


「やっぱりきたぎょぎょね」


フィシュタニアの門の前に人影が見える。そこから聞きなれた声が聞こえてきた。あれ?あのシルエットと特徴的な言葉、まさか。


「なんでぎょぎょっとがいるの」


「何も言わずに行くなんて水臭いぎょぎょ」


「昨日会ったばっかじゃん!」


私は思わず鋭いツッコミをぎょぎょっとにぶつける。


「お前さん達にはこの国を助けてもらった恩があるからな」


ぎょっぎょっとの後ろからマガロ丼を作ってくれたおじさんがいた。


「こんなに朝早くからありがとうございます。ねむくないですか?」


ガーちゃんは申し訳なさと嬉しさの混ざったような顔で二人に訪ねた。


「漁師の朝は早いからな。自然と体が起きちまうんだよ」


豪快に笑いながらおじさんはそう言う。その後ろでぎょぎょぎょと笑っているぎょぎょっと気持ち悪いから笑うのやめてくれ


「お嬢ちゃんたちこれを是非持っていってくれよ」


おじさんはぬのでまとめられたものを私たちに手渡す。なんだこれ?


「おじさんこれ何?」


「フィシュタニアで釣れた魚を使った干物だ。日持ちするから持ってくといい」


「こんなに貰っていいの?」


布をとって中を見ると、脂ののったおいしそうな干物が沢山入っていた。


「お嬢ちゃんたちはこの国の英雄様だぞ? これでも足りないくらいさ」


「英雄……なんだか照れますね」


ガーちゃんは恥ずかしそうに少し頬を赤らめた。反応が可愛すぎる。


「きっとまた会えることを祈っています」


門を出て私たちは振り返りもう一度お礼を言う。


「クソお世話になりましたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


私は一人スライディング土下座をしてワ〇ピースのサ〇ジみたいになっていた。これ一回やってみたかったんだよね。


「元気でな」


「気をつけるぎょぎょ」


私たちはこうして二人の恩人に見送られ、新たなる国を目指して一歩を踏み出した。




「はぁはぁなんなんだ。お前は」


街だったものは瓦礫になれ果て、その男一人だけが立ち尽くすばかりだった。


「あなたの、いえ、この国の負けです。ポイズニスタの王シビレン。残念でしたね。ご自慢の毒が私に聞かなかったようで」


黒のマントをなびかせて、クルーリ・テンペスタは冷たい笑いを彼に向けた。


「こんなことをして他の国が黙ってねぇぞ」


「まずは自分の心配をしたらどうですか? まぁいいでしょう。この国もあの方のものです。


クルーリ・テンペストから放たれたエネルギー弾はシビレンを貫き、ポイズニスタに静寂が訪れた。




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