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日常Ⅱ:Vol7



「あっ...!やばい...!攣る...!」



近くのコンビニでペットボトルの飲料水を購入し、

ベンチに腰をかけようとした時だった。



すでに、限界を超えた竜司のふくらはぎが、悲鳴を上げる。



ーービクッ...ビクッ...



痙攣した筋肉を宥めようと、竜司は、両手で両足を押さえる。



「あぁ...!こんな時に限って...!」



日頃の運動不足のツケを、思わぬ形で払う事になった。



5分後、



ようやく、ふくらはぎの筋肉トラブルは収まった。



竜司は、水を飲みながら、半ばボヤけた意識で

周りを眺めていた。



そこに、幼い少女と少年がいた。



少女は、若干の歳上で、10歳位だろうか、

対する少年は、8歳位で、どこか泥遊びでも

していたのだろう、二人とも全身が汚れていた。



純粋無垢に、楽し気な会話をしている。



ーー私、はるひこ君の事が好きだよ。



突然の告白を、少女がした。



ーーうん、僕もりこちゃんの事が好き!



少年は、間髪入れず、清々しい答えをした。



ーー私、こんなにも泥んこになっている女の子だよ?



頬を赤く染めながら、少女は謙遜した。



きっと、自分自身を普通の女の子とは違うから、

受け入れてくれるか、心配から発せられた言葉なのだろう。



だが、そんな杞憂は、一瞬で、彼方へと失せていく。



ーー僕もそうだし、りこちゃんだから、好き!



少年は、彼女の様子がどうであれ、関係ないのだろう。



まっすぐで正直、誠実な言葉が、彼女に届く。



ーーじゃあ、将来、私が、はるひこ君のお嫁さんになってもいい?



ーーいいよ!



「即答かよ...。」



竜司は、まさかのプロポーズの現場を目撃してしまい、

つい、ツッコミを入れてしまった。



ーーじゃあ、約束だよ。私と結婚するの。



ーーうん!



「純愛だなぁ...。」



手を繋ぎながら、将来のカップルが去っていった。



竜司は二人の純真に触れ、心が浄化された気分になった。



同時に、決して彼の夢の行い無駄ではない事が、

こうして、目の前で具現化された。



子供のおままごとだと、揶揄する輩がいるかもしれない。



だが、まだ幼い二人に、とても冗談めいた雰囲気ではなく、

結ばれる運命を、竜司は、予感した。



こうなる未来もあったのだろうか。



お互いが素直になり、愛し愛される行く末が。



残念ながら、竜司と彼女の夢では、成し得なかった。



だが、世界は、小さくも、変わりつつある。



「そういえば...。」



ふと竜司は思い出し様に、アプリで、

先日話題になった芸能ニュースを調べた。



ーー『美女と野獣!お笑い芸人Yと人気女優Aがゴールイン!』



ーー『現在、Aさんは妊娠しており約...』



「大きなお世話...だよな。」



ニュースを読みながら、そう言葉を漏らした竜司だが、

青空を見上げながら、その口角は上がっていた。



「そろそろ...帰るか...!」



帰宅の途につく事にした。



全身、乳酸が溜まり切っており、疲労困憊ではあった。



しかし、竜司の足取りは軽やかであった。



「お幸せに...。」



幸運を祈る言葉と共に、竜司は、朗らかな表情で、

公園から去っていくのであった。




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