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日常Ⅱ:Vol5



「では、また機会が来たときに、お会いしましょう。」



聖女は、そう伝えると、姿を消した。



ーー帰る手段がないのですが...。



前回は、公衆電話があったから、

現実に戻る事ができたが、ベンチ裏に

電話ボックスは見当たらなかった。



「それと、もう一つ。」



聖女が、竜司の目の前に現れた。



「うおっ!?」



死角からの聖女のサプライズ登場に、

竜司は、身体ごとベンチから転がり落ちた。



ーーいてて...。



体をさすっていると、聖女が話し始めた。



「今回のミッションで、竜司さんがよくやった事があります。」



「よく、ゆきめさんと、キスや性行為をしませんでしたね。」



「それができただけでも、立派です。」



ーーえぇ...。



童貞たる所以か、竜司は、聖女の発言に戸惑った。



山川涼太というキャラだから演じる事が

できた訳だが、素の春田竜司は、ウブだ。



つまり、男女の関係や性に関して、疎いのだ。



知識はもちろん、経験も乏しい。(むしろ、0だ。)



とどのつまり、童貞だ。



それを、聖女という美女が、淡々と、

何の恥じらいもなく、タブー視する事なく、

当たり前の様に、話してきた。



純粋がゆえに、竜司は、羞恥心を感じていた。



「竜司さんの貞操は、とても貴重です。」



「いわば、ダイヤモンドです。」



「運命の人が現れるまで、決して

誰にも、渡さないでくださいね。」



ーーえぇ...いつの時代だよ...。



更に、奥深い発言をするモノだから、

竜司は、余計に困惑した。



童貞は、とても貴重な資源だ、大事に守れ、誰にも渡すな、



その様にしか、聞こえなかった。



竜司にしてみれば、30年近い人生、

未だ、童貞である事に、生き恥を覚えていた。



しかし、聖女は、肯定し、むしろ貞操を奨励している。



何か、竜司の使命と関係しているのだろう。



「『性欲を制すれば、世界を制す』」



「これをしっかりと覚えておいて下さいね。」



ーーどこかの格闘技の格言かよ...。



ツッコミが冴える竜司であったが、

聖女の事だ、よっぽど重要な話なのだろう。



竜司は、ひとまずは、この言葉だけは記憶する事にした。



「あと、もう一つ」



ーー何やら嫌な予感しかしないのですが...。



聖女のこの文言は、ロクな事にならないのだが、

その事実が、言語化される。



「性エネルギーのムダ遣いは、控えてくださいね。」



「なので、オ○ニー禁止です。」



ーーウソ...。



思わぬ禁欲指令に、竜司はその場から崩れ落ちそうになった。



PCファイルに溜まった数々のおかず動画、

お気に入りのアダルトサイト、サブスク、

フォローしているセクシー女優...etc



「もちろん、全消去、退会してください。」



キッパリと聖女に、判決を下された。



「では、次のミッションで、お会いしましょう。」



項垂れる竜司をよそに、聖女は、忽然と、姿を消すのであった。



ーーピコン!



竜司のポケットの中で、通知音が鳴った。



「こんな事って...。不幸だ...。」



楽しみを失ってしまった竜司は、

ボヤキながらスマホを取り出し、

バッジが付いているアプリをタップした。



直後、竜司は、元の現実へと帰還した。



自家発電ができない、悲しみと共に、目を覚ますのであった。



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