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日常Ⅱ:Vol4



ーーゆきめさんの行く末を、見届けてくださいね。



ゆきめの夢のミッションを終えた後、

聖女は、別れ際、竜司にそう伝えていた。



「まさか...。」



ーー知っていたというのか、結末を...。



彼女の運命は、あの時、すでに決められていたのか、



竜司の行いは焼け石に水で、

やはり、徒労に終わったのではないか、



竜司は、苦悩の渦に囚われそうになっていた。



「厳密には、違います。」



「ゆきめさんの死は、決められていたのではなく、

彼女自身が、その運命を選んだのです。」



ーー何を言っているんだ?



竜司は、言葉の意味を理解できなかった。



聖女の言葉を、文字通り、受け取るならば、

ゆきめは、自ら、進んで命を身投げした、



一言でいえば、自殺をしたという事になる。



現実では、彼女に恨みを持っていた犯人に、

その命を奪われている。



そうなる運命を、ゆきめは、選んだ。



ーーそういう事...なのか?



竜司は、混乱しながらも、答えを導き出す。



「その通りです。」



聖女は、肯定する。



「結果論になりますが、ゆきめさんは、

とうに限界を迎えていました。」



「苦しみに満ちた現実を生きるよりも、

いっそ死んでラクになりたい。」



「ゆきめさんは、そう本気で思っていました。」



「しかし、竜司さんが登場した事で、

彼女に、いくつかの道が広がりました。」



「いわば、竜司さんのおかげで、

それまで自殺しか選択肢がなかった

彼女に、他の可能性が生まれたのです。」



「これは、竜司さんの魔王たる所以ですね。」



「普通の男性では、生きる希望を見出せません。」



聖女は、彼女の隠された秘密を、より鮮明にした。



「ちなみに、私は、神様ではありません。」



「竜司さんが思う程、私は、他人の運命を決定づける

傲慢な存在ではありませんよ。」



竜司の思考を訂正する事も忘れなかった。



ーーじゃあアンタは何者だよ...。



ツッコミを入れたい所ではあったが、



ーーそうだったのか...。



同時に、竜司は、安堵した。



決して、竜司の行為は、犬死にする程の虚しさはなかった。



ゆきめの人生に、可能性を提示し、

救いの手を差し伸べていたのだ。



だが、彼女は、その道を放棄した。



もう二度と、やり直すチャンスさえ、手放したのだ。



当事者である竜司にとって、悔やまれる結果だ。



「竜司さんは、やれる事はやりました。」



「最後は、ゆきめさん自身が選んだ結末です。」



「竜司さんは、魔王として、

彼女を見届ける責務を全うしました。」



「過剰な同情は、身を滅ぼしますよ。」



ーーわかってはいるけどさ...。



竜司は、頭では、聖女の言っている事を理解している。



しかし、いざ、人の死を前に、

彼の心は、すぐに切り替えられる程、

挫折を力に変える器は、まだなかった。



「それに、彼女の死は、無駄ではありませんよ。」



「ゆきめさんの事件は、他の人達の

潜在意識に、影響を与えました。」



「影響力の大きかった彼女のコンプレックスは、

やがて、集団の意識を変えていくでしょう。」



「結末がどうあれ、彼女の夢から帰還した時点で、

竜司さんは使命を、全うしているのです。」



改めて、聖女は、竜司の使命の重要性を説いた。



「...。」



まだ、心が煮え切れないままであるが、

それでも竜司は、前を向くしかない。



ある意味、竜司は、ゆきめの生き証人だ。



彼女の死をムダにしない為にも、

彼は、次なるミッションに挑み、

夢の世界から現実を変えていくしかない。



「はぁ...。」



ため息をつき、片手で頬をつきながら、

目の前にあるメタセコイアの木々を眺める。



まるで、竜司を支える守護神の如く、存在感を放っていた。



そのまま思考し、時間にして、

5秒の沈黙の後、竜司は、顔を上げる。



「わかったよ。」



彼のその一言は、次へ進む、新たな決意であった。



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