日常Ⅱ:Vol3
「犯人は、寺田歩容疑者」
「交際を断られた事による私怨で、
包丁で、被害者を刺したとみられます...」
ーーえっ...?
テレビから流れる報道に、竜司は、呆然とした。
つい、先日まで会っていた人物が、
もうこの世にはいなくなってしまった。
あまりにも現実離れした出来事を、竜司は、信じられなかった。
しかし、ゆきめの夢で、彼女の秘密を知っていたから、
多くの男性の気持ちを逆撫でしていたのだ。
古田ゆきめ、199×年生まれ、年齢3×歳、
彼女は、高校を卒業して大学進学後と同時に、
水商売の仕事を始める。
多くの男性が、ゆきめをお立て、褒め讃えるので、
外見のコンプレックスを、歪んだ形で満たしていく。
だが、彼女のコンプレックスは解消される事はなかった。
表の学生生活では、彼女よりも綺麗な女性が多くいた。
次第に、コンプレックスが刺激され、整形に着手、
彼女の願うルックスを、多額の金銭と代償に手にする。
表の日常では、ミス大学に選ばれ、
芸能事務所からスカウトを受ける、
裏の非日常でも、トップクラスの売り上げを誇り、
店の看板となる、人気嬢へとのし上がる。
しかし、それでも、ゆきめの欲望は満たされなかった。
彼女を妬み、足を引っ張る人達が現れたのだ。
ゆきめを認めるどころか、否定する様になった。
異性関係でも、心の底から彼女を愛する男性はいなかった。
ひとえに、彼女の造られた美貌を求めていた。
ゆきめは、その事実に耐えられず、男性遍歴を重ねていく。
ある時期は、7股をしていた程だ。
しかし、彼女のコンプレックスは、消えなかった。
むしろ、より強めるだけの結果となり、拗らせる。
大学を卒業し、竜司と同じ会社に就職して、
一旦は、彼女の劣等感は、なりを潜めた。
それは、彼女が自身に過大の仕事を課して、
紛らわせていたに過ぎない。
次第に、彼女の体と燻っていた精神も、限界を迎えていた。
そのタイミングで、竜司が、彼女の夢に潜入したのだ。
そして、彼女の真相を知る事となる。
彼女に起きた悲劇は、心の闇が表面化していた時期、
犯人の男性は、明確は動機はわからないが、
痴情のもつれ、ゆきめの態度に逆恨みしたのだろう。
ゆきめは、新たな一歩を踏む所で、その生涯を閉じてしまった。
「俺のやった事は無駄だったのか...。」
「彼女を救えなかったのか...。」
その場で、竜司は、力抜ける様に、足元から崩れ落ちた。
その日、竜司は、会社を早退した。
目が虚なまま、帰宅の途につく。
事切れるかの様に、床に就木、そのまま目を閉じた。
「来ましたね。」
「ゆきめさんを見届けましたか?」
気づいたら、竜司は、いつもの公園のベンチにいた。
その隣には、聖女がおり、竜司が来るのを予見した様に、
現実の出来事を尋ねるのであった。




