天秤Vol:23
ーーGRRRRR...!
目覚まし時計の騒がしい音が部屋を木霊した。
「...。」
竜司は、それに呼応するかの様に、目を覚ました。
スイッチを押し、けたたましい音源を消した。
銃弾が飛び交う死戦の夢とは打って変わり、
静寂さが漂う現実に戻ってきた。
「確かめるか...。」
そう呟き、竜司は、現実のゆきめと会うべく、
身体を起こし、出勤の支度を始めるのであった。
電車に乗る通勤の最中、
変わり映えしない景色を眺めながら、
今回の夢を振り返る。
初めて他人の夢に潜った事、
ギャップのある古田ゆきめの姿、
そこで知った彼女の秘密や闇...
その一つ一つを吟味しながら、現実で答え合わせする。
いつも通り、同じ時刻に会社に着いた。
そして、同じ場所で、いつもの様に、古田ゆきめが現れた。
「今日のお昼、時間ある?」
竜司は、すぐに彼女を見るやいなや、尋ねた。
「えっ...特に用事もないから、大丈夫だけど...。」
急な彼の誘いに、ゆきめは面食らった。
無意識に、竜司の変化を察知し、
いつもと違う彼の雰囲気や態度に加え、
有無を言わせない、何かを感じ取ったのだろう。
すでに、竜司は、『彼女』を知っている。
「じゃあ、12時に入り口で会おう。」
竜司は、ゆきめに約束を取り付けたら、
そそくさと職場に向かった。
彼女の方はというと、困惑の表情を浮かべたままだ。
だが、何かを覚悟したのか、手を無意識に、キツく握っていた。
午前中の業務を終え、竜司は、会社の入り口前に来た。
さっさと仕事を片付けて、彼女と会うべく、
いつもより彼の動かす手は、速やかだった。
約束の時間まで、まだ5分ある。
側から見たら、デートに見えるかもしれないが、
今回は、特殊な事情による逢瀬だ。
竜司が、腕時計を確認している時だった。
「お待たせ。」
ゆきめがやってきた。
手には、昼食の入ったレジ袋を引っ提げていた。
「サンドイッチ?しかも卵たっぷりの」
「えっ!?なんでわかったの!?」
ゆきめは、買ってきた昼食の中身を、
竜司が、ピンポイントで当てた事に仰天した。
竜司にとっては、別段、驚きはない。
すでに、彼女の夢で、予習済みであったからだ。
「好きそうな顔をしているから。」
「意味がわからないのだけど...。」
ギャルのゆきめがオーバーリアクションで、
喜ぶ姿を目撃していた竜司にとって、至極、
真っ当な回答をした。
ゆきめにしたら、意味不明のジョークに聞こえ、戸惑う。
「とりあえず、行こうか。」
頭が整理されていない消化不良なゆきめを尻目に、
竜司は、歩を進めるのであった。




