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天秤Vol:16



「それで、話はそれだけ?」



「昼休みが終わるけど、こんな事の為に

俺の時間をムダにするの?」



涼太は、ゆきめに、プレッシャーを畳み掛ける。



「はい...なんでもありません。」



ゆきめは、萎縮していた。



先の調子づいていた人とは、まるっきり別人だ。



「お先に...失礼します。」



この場にいるのが、耐えきれない様に、

彼女は先に、この場を去ってしまった。



ーーったく、面倒くせぇ女だな...。



あまりの手のひら返しの対応に、

彼女の人によって態度をコロッと変える姿勢を

如実に表してしまった。



竜司は、そういう人種が、嫌いだ。



『猿が...。』



闇落ちするのも、無理はない瞬間だろう。



だが、彼の場合、話は別だ。



何よりも、彼女の口から、ある程度の

情報を得る事に、成功した。



そして、竜司は、無自覚だが、魔王の才を発揮していた。



収穫があったのは、間違いない。



ーーちょっと、近くを探索してみるか。



ゆきめがいなくなった今、彼女に招待された

深いパーソナルゾーンは、ガラ空きだ。



「私の好きな場所で、いつも来るんだ!」



そう彼女は、屋上の事を言っていた。



どこかに情報が隠されている可能性があると、

竜司は踏んだ。



しかし、屋上は、特段、入り組んだ所ではない。



隠し場所には適さないだろう。



ーーうん?



竜司は、ふと視線を落とした時に、気づいた。



先程まで彼女が座っていたベンチ、

正確には、真下にある地面だ。



その1マスだけ、色が微妙に他のアスファルトと違っていた。



竜司は、ベンチを動かし、色違いのブロックの隙間に手を入れた。



ーーガコッ!



持ち上げ、取り外す事ができた。



中には、小さな金庫が入っていた。



ーーこんな所に隠していたのかよ。



ダイヤル式だが、無用心に、

ご丁寧なメモ書きがあり、

開錠の方法が書かれていた。



おそらく彼女が忘れない為に、書き置きしたのだろう。



ーーガチャ!



苦労する事もなく、金庫の扉は容易に開いた。



現実の古田ゆきめが、誰にも悟らせない、

ひた隠しする情報が、ここに眠っている。



中には、一つの封筒があった。



ーーさて...何が書かれているのやら...。



封を開けようとした、その時だった。



「そこまでよ。」



気づいたら、涼太の背後に、古田ゆきめがいた。



しかも、何人もの学園の生徒達を従え、銃を構えていた。



「手を上げなさい。」



「そして、ゆっくりと、こちらに向きなさい。」



彼女が、冷酷な声で、涼太に告げる。



言う事を聞かなければ、即刻撃つと言わんばかりだ。



流石の涼太も、武器を手にした相手には

分が悪いので、おとなしく指示に従った。



ゆっくりと立ち上がり、振り向いた。



先程までの彼女とは別人だった。



生徒達は、死んだ魚の目をしており、ロボットの様だった。



涼太の命を奪う事に、躊躇や抵抗が、まるでない構えをしていた。



「その封筒を渡しなさい。」



ゆきめは、涼太が手に持っている封筒を差した。



「いつ...気づいた?」



涼太は、時間を稼ぐ為に、彼女に質問した。



「ここは、私の夢よ?」



「一人一人の学生は、私の手足みたいなモノ。」



「あなたの監視なんて、造作もないわよ。」



どうやら彼女のエージェントなる

防衛システムが、涼太を見張っていた様だった。



屋上だから、監視の眼も届きやすかったのだろう。



そして、ものの見事に、侵入者だとバレた。



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