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天秤Vol:15



ゆきめは、涼太の返事を待っていた。



竜司は、意を決し、山川涼太として話す。



「ありがとう。」



「ゆきちゃんの素直な気持ちを聞けて、嬉しいよ。」



「だけどごめん、その気持ちには応えられない。」



涼太が、これから告白を断ろうという時、

ゆきめの周辺の温度が、冷えていく感覚がした。



急に、雲行きが怪しくなる。



涼太は、出来る限り、着地を和らげる為に、

フォローを入れる事にした。



「まだ出会ったばかりだし、

俺は、ゆきちゃんの事を何も知らない。」



「だから、まだゆきちゃんの事を

そこまで考えられない。」



「それが正直な気持ちだけど、ゆきちゃんの事を

嫌いになった訳ではないからね。」



涼太の返事に、ゆきめは落ち込んだものの、

若干、正気を取り戻した。



竜司の内心では、現実世界の彼女と同様、

これ以上の立ち入りは禁物だ。



「そっか。」



「残念、せっかくのイケメンと付き合うチャンスだったのにぃ。」



竜司は、この言葉に、イラついた。



夢は、現実とは違い、嘘をつかないし、

本心からの言葉が出てくる。



結局、ゆきめと交際した所で、上辺の付き合いになる。



現実で、竜司にキツい一言を浴びせられた時、

彼女は、真摯に受け止めず、逆に、表面を

取り繕いながら、彼を乏しめた。



ただの、八方美人だったのだ。



ゆきめは、彼女の心に鎮座する天秤に、

常に、見せかけの比較に踊らされた、

可哀想な小娘なのだ。



だが、そんな哀れな雌豚(聖女曰く)を、

竜司はこれから調教して救わなければならない。



ーーはぁ...。メンドくせぇ...。



だが、今は、春田竜司ではなく、山川涼太である。



ーーイケメンと美女は何をしても許されるでしょ?



巷でたまに聞く、メチャクチャな論法を

この際だから、実際に、利用してみる事にした。



「ハッ?何を言っているの?」



脅す声色を使い、涼太は、態度を豹変する。



ーービクッ!



ゆきめは驚いた様子で、こちらを見た。



ここからは、涼太が支配する。



「いきなり俺と付き合えるとでも思ったの?」



「なんで、お前と付き合わなきゃいけないの?」



さっきまでの優しさから一転、

急に俺様キャラへ変わった涼太、



ゆきめは、腰が引け、顔を青ざめる。



「えっ..。いきなりどうしたの?」



「どうもこうもねぇよ。」



「第一、俺とランチをするだけでも、贅沢なんだよ。」



「あまつさえ、告白するとは...。」



「度し難いぞ。」



だんだん、演じる事が楽しくなってきた竜司だった。



圧倒された、ゆきめは、言葉が出なかった。



今まで、こんな態度を取られた事がなかったのだろう。



現実では、チヤホヤされてきたのだ。



むしろ、彼女は、その好意を、打算的に利用していた。



一言で言えば、相手を舐めていたのだ。



これまで、彼女は外見を武器に、

自分よりも格下ばかりの相手をしては、

甘い汁を吸ってきた。



だが、夢の世界では、内面の強さが問われる。



つまり、ゆきめは、初めて、

自身よりも、圧倒的に格上の存在を

相手にしている。



いわば、聖女と竜司の関係性だ。



格上が相手の時、格下は、言葉が出ない。



何を言おうが、完膚なきに叩きのめされるのを

肌で理解しているからだ。



竜司は、本来、どの人間関係においても、

常に、格上で、強者の側だった。



しかし、家庭環境の取り巻きで、

彼の高い精神性は貶められていた。



その影響で、いつも格下の人間として振る舞っていた。



そうなると、本来の格下側はどう出るか?



舐めきった態度を取り始める。



結果、竜司は、彼本来の価値をさらに悪化させる、

負のループにハマってしまっていたのだ。



最初の涼太の応対は、格下のやり方だった。



だから、ゆきめは、軽く見下し、小バカな態度を取った。



だが、涼太が態度を一変させ、

本来の格上の立場になった途端、



彼女は、沈黙した。



蛇に睨まれたカエルの様に、固まってしまった。



聖女の宣言通り、竜司は、魔王として、

この世界を支配する勢いで、格上としての

精神性の高さを、ようやく発揮したのだ。



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