天秤Vol:3
竜司の様に、劣悪な家庭環境で育つ
男性は、総じて、このハンデを負いやすい。
すると、現実の世界ではどうなるか?
多くの場合、女性不信や人間不信に陥ってしまう。
コミュニーケーションが取りにくくなり、
たった一言の挨拶さえ、難しく感じる。
人間関係が疎遠になり、孤立しやすくなるのも、当然である。
しかも、幼少期から無意識の内に、
潜在意識に刷り込まれている。
よりにもよって、その相手が、家族である。
タチの悪さが、際立つばかりだ。
男性にとって、生まれて初めて、接する女性である。
その母親に難があれば、その後の人生に困難が生じやすい。
ーーじゃあ...。
竜司は、ふと気づいた。
「そうです。」
聖女は、彼の辿りついた答えに、同意した。
「女性も、例外ではありません。」
「ありもしない、理想の男性を吹き込まれています。」
「結果、母親の願う男性を求めてしまいます。」
「それが、さも本人の願いであるかの様にです。」
竜司は、自身の身に降りかかる問題の複雑さに気づいた。
いわゆる、毒親の元に育ってしまった子供は、
その親の精神性や世界観に毒されている。
それが、女性の場合、今回だと厄介だ。
現実に、パーフェクトな男性は存在しない。
毒親に刷り込まれた女性からしてみたら、
リアルの男は、ナヨナヨしく、弱々しい。
そんな男性に頼ったり、守ってもらうなんて、
ごめん被りたいし、もちろん、一緒に生活をする事すら、
生理的に嫌悪する。
だから、自分一人で生きた方が、遥かにマシだ。
自分の目にかなう男がいても、お遊び感覚でいい。
竜司が、初めて、聖女と出会った時、
彼女に言われた内容の本性を垣間見た。
「これじゃあ...」
性別関係なく、お互いに、心の底から、
結婚しようと思えるのだろうか?
仮に、結婚したいと思っても、その気持ちは、仮初だろう。
周囲の環境から、ありもしない理想の人物、
キャリア、人生、彼らの望むレールを歩む様に、
仕込まれている。
時代の変化の荒波によって、自身の存在意義や、
価値が揺らぎ、精神的に脆くもった男性、
そんな男達に幻滅し、自立せざるを得なくなり、
心の中では、孤立したまま、精神が不安定な女性、
これほど、共倒れという言葉がピッタリな状況はない。
世界を救う(もとい、強制的に救わないといけなくなった)
立場の竜司にとって、より頭を悩ました。
知れば知る程、そんじょそこらで片付けられるモノではないのだ。