日常Ⅰ:Vol3
ーージリリリリリ!!
けたたましい音が、部屋中に鳴り響いていた。
音源の主である、目覚まし時計に、
竜司は、やっと左手だけを伸ばし、ベルを止めた。
「...ヤバッ!!」
いつもなら起きているはずの時間よりも、
10分以上の、遅い目覚めだった。
よほど疲れていたのか、竜司は、
しばらく、時計のベルが鳴り響き続けていても、
眠りについていたのだ。
飛び起きる様に、立ち上がり、
急いで、支度をして、駆け足で、
玄関を出た。
なんとか、遅刻ギリギリの電車に乗り、
無事に、出社を果たした。
ーーゼェ...ゼェ...。
全速力で走っていた為、全身から汗が吹き出し、
ビッショリと濡れていた。
朝食も食べずに、やってきたので、
竜司の身体から溢れ出た、アドレナリンが
ピークを超えると、ドッと疲労がきた。
「昨日から、不幸だ...」
夢の世界で、ロクな目に遭ったばかりなのに、
いつもの日常に戻ってきて早々、災難であった。
「おはよう、竜司くん!」
ビクッっと思わず、反応した竜司、
夢の世界で突然現れ、話しかけてくる、
あの忌々しい、サイコパスマリアがフラッシュバックした。
(竜司が、命名したあだ名)
ーーまさかな...。
先ほどとは、また違った汗が流れた竜司であったが、
さすがに、違った。
振り返ると、彼が見覚えのある人物だった。
同じ年に入社した、同期の古田ゆきめだった。
「あ...おはよう...ございます...」
思わぬ登場人物に、竜司は、戸惑った。
「もう..同い年なんだから、そんなにかしこまらないでよ」
そう茶化す、彼女であったが、彼にとって、
ゆきめは、同期の眩しい存在だ。
仕事がデキるキャリアウーマン、今や期待のエースだ。
入社以来、あまり会話を交わした事もないし、
顔見知った程度だ。
しかも、とびっきりの美人だ。
あのサイコな聖女と、遜色ないルックスだ。
「すごい汗だけど、大丈夫?」
100mの陸上選手の様に、全速力で
会社に駆け込んできたのは、竜司だけだ。
息が上がり、肩からは蒸気が出ている、
しかも、両手で、膝をつき、
顔面蒼白、疲労困憊である様子は、
誰が見ても、明らかであった。
まだ、息が上がっている状態だったので、
ゆきめの言葉に、竜司は、答えられる余裕が
なかった。
(正確には、会社のマドンナ的な存在に、
話しかけれて、どう答えたらといいのか、
戸惑っていたのもあるが)
「とりあえず、これをあげるから、またね。」
そう言うと、彼女は、持っていた
ペットボトルのお茶を、竜司に渡して去った。
「あ...」
せめて、お礼を伝えようと思ったが、
すでに、彼女は、職場に向かってしまい、
機会を逃してしまった。
ひとまず、竜司は、足をひきづる様に、職場に向かった。




