ファーストミッションVol:25
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「うぅ...」
全てをやり終えた反動で、緊張の糸がこと切れた。
竜司は、その場に崩れ落ち、倒れ込む。
ナイフ刺された箇所から流れる出血がひどく、
意識を保っていられるのが、やっとだった。
いや、もう限界は、とうに超えていた。
マンションやその周りの土地や建物も、
彼が倒れると同時に、砂の様に崩れ始めた。
つまり、今回のミッションの終わりを告げる。
夢の世界も、その役割を終えたのだ。
竜司は、顔を上げる気力もなく、周囲で
何が起きているのかさえ、気づいていない。
瞳の輝きも失せ、瞼も徐々に閉じ始めていた。
しかし、彼は、笑っていた。
意識が途切れつつある中、口角だけは、自然と上がっていた。
ーーあぁ..終わったんだ...
長年の呪縛から解き離れた実感、
やっと、取り戻した心の平和、
悪夢からの覚醒、
その全てをやってのけた。
人生で初めての、達成感を噛み締めていた。
そして、「生」というモノを味わっていた。
「悔いは...ない...」
もう周りの音も聞こえず、瞼も閉じられ、
ブラックアウトする寸前であった。
にも関わらず、彼は、「死」を穏やかに、迎えていた。
心置きなく、やり切った実感があるからこそ、
出てきた、最後の言葉であった。
竜司の意識は、そこで、途切れた。
「おかえりなさい」