ファーストミッションVol:21
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まだ、この世に未練を残す亡霊として、
いわば、竜司の夢に取り憑いていたと言っても、
過言ではないだろう。
これまで、苦しんでいた悪夢の正体が現れた。
人間不信はもちろん、女性に対する言い知れない、
不安やプレッシャー、コミュニケーションの困難...etc
竜司の人生を、狂わせ、現実世界を生きづらくしている、
その原因となる元を作った張本人が、目の前にいる。
彼にとって、もはや、親ではなく、呪いや呪霊の類である。
「コイツを祓わなければ、永遠に終わらない...」
悪霊を祓い、除霊する感覚で、竜司は、母親という名の
トラウマと向き合い、対峙する事を決意した。
「お前は...」
「あんたは...」
これから放たれる彼の言葉は、過去の因縁を絶ち、
引導を渡す、これまでの負の遺産を清算する、
彼なりの、決意の言葉が紡がれる。
「もぅ....もう...俺の母親じゃない!」
「どこにもいない、そもそも俺には、親がいない」
「あんたは、母親の役目すら捨てた!赤の他人だ!」
親との訣別、20年以上の時を経て、
竜司は、ようやく、母親とケジメをつけようとしていた。
ーーギャァァァ!!!
母親らしき亡霊が、竜司の言葉を受けて、
悶え苦しみ始めた。
ーーソンナノ、ミトメナイ!
ーーアナタは、ワタシの...可愛いムスコ!
日本語らしき単語を、聞き取れはするものの
もはや、竜司の心に、竜司のいる世界に響き、
木霊する程の影響力を、急速に失いつつあった。
彼の放った一言は、それほどまでに、
それまで強力に縛っていた鎖を引きちぎり、
固く閉ざされた牢屋の鉄の扉をこじ開けた。
「うるさい、黙れ。」
竜司は、すでに、母親の事を見限っていた。
これまでの非人道的な行いを鑑みれば、
もう許すとか、許さないとかの基準を
とうに超えていたのである。
我が子にキズを植えつけた、犯罪者なのである。
つまり、今、竜司は、戸籍や法律、医学的などでは
母親となっているだけの、この女性を裁いているのだ。
母親は、一瞬、ピリついた竜司を前に、沈黙した。
黒く、ドロドロしていたオーラも、消失し、
一般の中年女性になっていた。
親子関係は、逆転し、夢の中のルール通り、
支配側と従う側の関係に、明確に分かれた。
竜司は、至って、冷静に、判決を言い渡すかの様に、述べる。
「ここは、あなたのいて良い場所でありません。」
「早々に、出ていって下さい。」
「ゆかりさん」
母親の名前を、赤の他人として、伝えた。