ファーストミッションVol:18
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竜司の予感は、的中した。
背中越しからでも分かる位に、
その人物は、彼にとって、切っても切れない
関係にあった。
背中にまで伸びた黒色の長髪、いつもよく履いていた
ブルーのジーンズに、白シャツ、クリッとした目に、
170cm近い高身長...
竜司の母親が、そこにいた。
「な...なぜ、あんたが...」
「見捨てた...!はずの!お...お前が!」
「な...なんで..」
「なんで...!いるんだよ!」
竜司は、声を詰まらせながら、感情的な声を荒げた。
それもそのはず、
彼の母親は、竜司の幼い頃に、友人の借金の
連帯保証人になり、突然、彼の前から姿を消した。
そして、行方をくらまし、5年以上が経った後、
交通事故で、命を落とした事を知らされた。
竜司の中で、母親は、慈愛とは真反対に位置する、
いわゆる、「毒親」であった。
いつも不機嫌で、笑顔を見た事がなかった。
家事も、手抜きが当たり前で、
たとえば、鍋料理を出したかと思えば、
安物の牡蠣しか入れていない、
嫌いだったトマトを、連日の様に執拗に入れ、
食事という、団欒なひと時を、拷問に変えた。
クラスメイトからのイジメに遭った時も、
助けてはくれず、むしろ、なぜ、手を差し出させねば
ならないのかと、逆ギレする始末であった。
何よりも変え難い屈辱だったのは、
ストレスが溜まると、水で濡れた雑巾で
引っ叩く事だった。
雑巾を持つ時は、竜司にとって恐怖の瞬間だった。
今の時代ならば、即座に、児童相談所や児童保護施設からの、
レスキューが入り、母親は、ブタ箱行きだっただろう。
しかし、悪運の強い事に、彼女は、
犯罪者の烙印を押される前に、蒸発した。
借金の連帯保証人になり、その友人が、飛んでしまったからだ。
その結果、竜司が10歳を迎える前に、
母親は、彼の前からいなくなった。
だから、彼にとって、母親はもう遠い存在であり、
記憶の片隅にこびりついた、カビの類なのだ。
しかし、こんにちに至るまで、竜司を苦しめてきた。
拭っても、洗っても、決して落ちない穢れの様に、
一種の呪いをかけられていたのだ。
竜司にとって、母親は、彼の精神世界を蝕む、悪夢そのものだった。
それが、遂に、この瞬間、ご対面の時を迎えた。
竜司は、今にも、狂いそうな程に、発狂しかけている
自我を、首の皮が一枚繋がっている状態で、保っていた。
「オェェ...!」
禍々しく、瘴気の様なモノを漂わせている
母親を目にして、竜司は、両手で口を塞ぎ、
胃から逆流してきそうなモノ、吐き気を堪えていた。
彼女の顔からは、生気を失っており、死相が出ていた。
まるで、死神の様に、自分の息子を待ち迎えていたのだ。
「りゅう...じ...」




