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悪魔の子Vol:11


「ヨッと!」



リュウジが、潜水服から飛び出して、

フワリと、宙に浮く要領で、一回転しながら

着地し、その姿を、表す。



140cmほどの身長や丸い目、

ベビーフェイスで、顔立ちがシャープ

なのは、変わりない。



だが、それ以外の出立ちが異なり、

もはや、別人であった。



眉を覆う様に下ろされた前髪、

ホワイトブロンドに染められた

韓流マッシュヘアー、



チーズが溶けた様な機械時計が

プリントされている長袖のパーカーで

お腹には、ポケットがある。



藍色の短パン、クッションが内蔵された

ソールに、流線的で、スタイリッシュな

フォルムの白色のスニーカーを履いている。



片耳には、銀色のピアス、



ただでさえ、垢抜けたキャラクターなのに、

陽キャを限界突破した様な身なりである。



そして、目に宿っている瞳、



散りばめられた星々の輝きと共に、

金色に、輝いていた。



「へへッ♩」



リュウジは、立ち上がり、不敵な笑みで

おもむろに、パーカーのポケットから、

棒付きのキャンディーを取り出す。



「そうそう、このツッパチャプスは、

たまらないんだよねぇ♩」



袋を開けられた、丸いアメを口に含み、

満面に笑顔を広げながら、嗜む。



「んじゃぁ、そういうことで〜♪」



「待て!待て!勝手に終わらすな!」



「続くだよ!つ・づ・く!」



自己完結して、その場を立ち去ろうとする

トラブルメーカーの問題児を、竜司は、

猛烈なツッコミで、引き留める。



リュウジの変化に驚く間もなく、

振り回される始末だ。



「もぉ、せっかちなんだから〜。」



「ろうそう...。」



「アナグラムみたいな暗号で、

早漏をディスるな!聞こえてるぞ!」



ボソッとした余計な一言にも、

反応するのは、さすがの領域である。



「失礼!噛みまみた!」



「違う!ワザだ!」



「はぁ?わざとですけど、何か文句でも?」



「言いかがりや揚げ足どりは、大人してどうなの?」



「炎上しても知らないよ?」



「確信犯かよ!余計に、タチが悪いわ!」



「そこは、わざとじゃない!?とツッコませろ!」



メインストーリーが、一向に、進まない。



シリアスだった雰囲気は、すっかりと、

ゴミ箱に捨てられた様に、一変するのであった。



どうやら、バージョンアップしたのは、

竜司だけではない様だ。



「そろそろ、ですかね。」



そこに、聖女の救いの手が入る。



ようやく、ガードレールからも、それに

それてしまった、話の本筋に戻ると、

竜司が安心したのも束の間、



「あっ、おねぇちゃん!」



リュウジが、キャンディを頬張りながら、

嬉々とした表情で、トコトコと走って、

聖女に近づいていく。



「パンツを見させて頂いてもよろしいでしょうか?」



聖女の元に、跪き、慇懃な態度で、尋ねる。



「バカ!」



聖女を相手に、なんとも命知らずな

お願いに、竜司は肝を冷やした。



もはや、これから赴くミッション以上の

絶望や恐怖が、そこにあった。



「はい、構いませんよ。」



「好きなだけ、ご覧なさい。」



「ウソッ!?」



しかし、ここで予想外、



聖女からの二つ返事での了承、



素っ頓狂な声を上げるのは、無理もなく、

竜司からしてみれば、天地がひっくり返った、

この世の終わりをも感じさせる、心境だ。



今の竜司には、口が避けても言えない、セリフである。



しかも、聖女は、クールな表情を

何ひとつ崩さない、泰然自若である。



ーー攻められるものならば、攻めてみなさい。



ーーできるものならば。



これでもかと格の違い、圧倒的な差を

見せつけられる格好となった。



謎の恥辱や敗北感で、顔を青ざめる

竜司とは別に、タブーを破った当の本人は、

いつも通りであった。



「ヤッタァー!」



「ヤッタ♩ヤッタ♩」



歓喜の舞は、もはや、滑稽である。



だが、ここで竜司は、ストップをかける。



「もういい!」



グイッと、リュウジの肩を引っ張り、

バスの中へと放り投げていく。



「ブゥ!何をするダァー!」



「その抗議は、却下だ!」



「さっさと行くぞ!」



勢いそのままに、バスに駆け込んでいく。



ーー話が進まん!



埒が空かない状況に、竜司は、

開き直り、強引な手段に出た。



ーープシュー!



二人が入ると、バスのドアは閉まった。



そして、徐々に、タイヤを回転させていく。



ーーコンコン。



出発直前、聖女が、バスの窓を

ノックしたので、竜司は、窓を開けた。



「そういえばゴミ...いえ、竜司さん。」



「今、ヒドイ事を言いませんでしたか!?」



まさかの聖女からの暴言に、初めて、

竜司は、言葉にして、ツッコンだ。



「最後に、もうひとつ。」



クスッと、一瞬の笑みを浮かべた後、

人差し指を上げて、伝える。



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