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悪魔の子Vol:9



「...。」



竜司は、意識を取り戻す。



ゆっくりと目を開けると、

3mのベンチに端に座っており、

メタセコイアの木々が並ぶ公園、



秋空の中、茶色の木の葉が、

ヒラヒラと舞い降りていた。



いつもの夢の世界が、竜司の視界に、広がっていた。



少々、異なっているのは、ベンチが、

数十年前に作られたかの様な木製、



背面と座面が、それぞれベニヤ板3枚、

それらを、白色の脚3本で支えられている。



「Where there is a will , there is a will.」



真ん中には、額縁の様に、

筆記体の英語が書かれていた。



また、すぐ隣には、バス停の標識が立っている。



「来ましたね。」



竜司が、首だけを横に動かすと、

聖女が、ベンチの反対側の端に座っていた。



ハイトーンのオフホワイト色で、

コーディネイトされたトップスと

レースのマーメイドスカート、



ベージュのオーバーシャツを羽織り、

キャメル色のパンプスを履いている。



今回も、聖書の様な分厚い書物を開き、

プラス、革製のキャラメル色のボストンバッグが、

足元に、置かれていた。



片や竜司は、白色のYシャツ以外は、

全身黒色のロングジャケットや革靴と、

フォーマルなスタイル、



ネクタイは、首元まで締められておらず、

緩み、カジュアルな雰囲気を出している。


 

「さて、今回のミッションは、

すでに、お分かりかと思います。」



「佐々木ファミリーです。」



聖女が、間髪入れず、本題に入る。



「彼らを覆う闇は、これまで以上、それも、

かなり性質(タチ)の悪い、厄介な部類です。」



白銀の髪をなびかせながら、

すみれ色の瞳は、竜司に、今回の

ミッションの難易度を伝える。



聖女が言うのだ、余程の難儀なのだろう。



「特に、影には、注意して下さい。」



「飲み込まれると、多少、面倒になります。」



ーーそんなにヤバイやつなのか、”アレ”...。



現実では、ほぼ至近距離にいた。



あとほんの少しでも近かったら、

影に引き摺り込まれ、竜司の夢は、

侵食されていたのかもしれない。



「結構、危なかったですよ。」



「ともすれば、最初から、不利な状況に

立たされ、幽閉されていましたから。」



ーーとんだ、地雷じゃねぇか...!



危ない橋を渡っていた事実に、

竜司の額からは、冷や汗が流れ、

くの字に、眉が曲がるのであった。



「現実にも、直接的に影響してくる、

”アレ”ですから、夢では尚更です。」



「十分に、気をつけて、潜入して下さい。」



いつもにはない、忠告のメッセージに、

竜司は、緊張の面持ちで、受け止める。



ーーキィィィ。



ーープシュー。



聖女の話を聞いていると、背後から、

車のブレーキ音が聞こえてきた。



竜司が振り返ると、バスが停まっていた。



いわゆる、スクールバスである。



アメリカの映画などで見られる、

10m以上ある長さで、黄色で塗装された

大型のバスが、停車していた。



「このバスに乗れば、目的地に着きます。」



「あとの流れは、いつも通りです。」



聖女は、言葉を付け加えて、説明する。



「ちなみにですが、ミッションが、

厄介になってしまった原因は、今回の満月が、

スーパーブルームーンだからです。」



ーーなんだそれ?



カタカナの横文字が、苦手な竜司は、

いまいち、内容を理解できなかったので、

聖女の解説を待った。



「スーパームーンとは、月が地球に最も近づき、

見かけの月の大きさが、最大となる満月です。」



「ブルームーンとは、ひと月に2回、

満月が2回あった時の、2度目の事です。」



月は、およそ1ヶ月単位で、地球を1周する。



基本的に、新月と満月は、月に一度だけだ。



しかし、2〜3年に一度、同じ月に

2回、満月を見るタイミングがある。



それが、ブルームーンと呼ばれる。



しかも、スーパームーンとも被った。



その2つが合わさり、スーパーブルームーンだ。



「要は、佐々木ファミリーに限らず、

人々の夢の中での、心の姿や感情が、

より強烈となって、映し出されます。」



「裏のウラ、奥の底まで、本性が

炙り出されてしまうので、この先、

とても不安定です。」



「どんな魑魅魍魎が出てくるのか。」



「カオスな世界観に、引っ張られ無い様に、

気をつけて下さいね。」



ーー百鬼夜行かよ...。



まるで、得体の知れない、化け物退治、

呪いを祓う、御伽話で雲を掴む様に聞こえたが、

とにかく、行かない事には始まらない。



「はぁ...わかりました。」



最先から不安のまま、ため息を吐きながら、

バスに乗ろうとした矢先、



ーーあれ?そういえば...?



リュウジが現れない事に気づいた、その時。



ーーガンッ!



何か硬い物が、竜司の頭頂部へと、

ヒットした衝撃が伝わるのであった。



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