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悪魔の子Vol:7



あまりにも、テンションの落差に、

竜司は、面食らった。



弟の方は、手が震えており、兄の服の裾を掴んでいる。



ーーイヤな事を思い出させちゃったかな。



闇の深さが垣間見えた竜司だが、

2人の変化に、申し訳ない気持ちになった。



自身も、劣悪な家庭環境にいたからこそ、

彼らの立場が分かる故、慮る事が大切である。



「大丈夫だよ。」



安心させようとする、その声は、優しい。



ベンチから降りて、姿勢を低くし、

二人と同じ目線に合わせて、話しかける。



「実は、お兄ちゃんにも、怖い人がいたんだ。」



いち思い出として、懐かしい感覚で語る様に、

思いやりの言葉を投げかけていく。



「でもね、やっつける事ができたんだよ。」



「だから、もし、二人に何かあったら

お兄ちゃんが守ってあげるし、安心して。」



経験者だからこそ含まれている

竜司の発言の真実味と説得力に、

二人の心は、落ち着きを取り戻した。



「ほんと...?」



その瞳は、救いを求めている。



できない約束はしない。



が、かといって、約束もしたくない。



今回の様な厄介事だと、なおさら避けたい、

逃げ恥メンタリティの持ち主である竜司、



しかし、事の重大さはもちろん、



同じ境遇で、辛い思いをしている、

まだ幼い子どもを見捨てる程の

腐った人間性ではない。



「うん。」



今までの竜司ならばしなかった、誓いを立てる。



「約束する。」



小指を差し出して、誓った。



ーー乗りかかった船だ。



「お兄ちゃんが、守ってあげる。」



言い切った。



ーーとことん、行く所まで行ってやるさ。



少年達の顔に、明るさが戻った。



「わかった!絶対だよ!」



竜司の小指に、先に兄の小指が交わった。



次に、遅れて、弟の小指が、

少し緊張しながらも、加わった。



「うん!必ず、守るよ!」



ーーフラグには、絶対しねぇぞ...。



柄にもない事をしているのもあるが、

幼い子供との約束が、これからの社運をかけた

重要な契約書にサインした感覚である。



竜司の心の中では、腰が引けつつも、

もはや、逃げられない事実に、冷や汗をかく。



そして、約束を破り、子ども達を失望させる

情けない姿は見せないと、改めて、誓うのであった。



「これは、男の友情の証。」



「だから、今のお話は、3人だけの秘密ね。」



ウインクをかましながら、二人に、

話が漏れない様に、約束事を追加した。



「わかった!」



友情という名の条約を締結した後、

3人は、コンビニで、おやつを購入し、

しばしの日常を楽しむのであった。













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回想を終え、竜司が病室のベッドで

寝転がっている場面に戻る。



ーー結局、わからずじまいだったな...。



あの影の正体を掴む事はできなかったが、

マナの話になった途端、兄弟の様子が

一変したのは、確かである。



あれ以上の詳細は、聞き様がない。



むしろ、話を続けて、彼らのトラウマを強め、

心の傷が深くなるのは、避けたかった。



繊細な年頃だからこそ、踏み込まなかった。



ーーまっ、その時が来たらわかるか。



竜司は、考えてもしょうがないので、考えるのを止めた。



その先の答えは、次の満月の夜にわかる。



ーーまずは、体を休めよう。



目下、事故によるダメージや、手術によって、

竜司の身体には、相当な負担がかかっている。



ひとまずは、治療に専念し、次の夢に、

備える事にするのであった。



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