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悪魔の子Vol:1



キッカケは、竜司が、入院生活の時であった。



ーーイテテ...。



トイレへ向かう途中、ズキズキとする

股間の痛みで表情を曇らせながら、歩いている。



手術を終え、全身麻酔から目覚めて

気づいたのが、彼の大切な息子に

カテーテルの管が挿れられていたのだ。



男性の急所を、医療行為の結果とはいえ、

それが、苦痛のタネとなっている。



しかも、女性の看護師に、その尿管の

チューブを抜いてもらった。



ーー恥ずい...。



チェリーの竜司にとっては、

まさか、生まれて初めて、異性に

アソコを見られた羞恥を感じた。



男性によっては、何かのプレーかと

興奮する輩もいるかもしれないが、

ウブな竜司には、そこまでの余裕はない。



「今から抜きますね。」



「はい...。お願いします...。」



恥ずかしさのあまり、担当ナースの

顔さえも、見られなかった。



たとえ、仕事とはいえ、竜司の貞操観念を

大いに揺るがしたのだった。



おまけに、右腕は、点滴のチューブを挿れられている。



うっかり、何かの拍子で、つまづいて

点滴が抜けて、出血する大惨事にも

気をつけないといけない不自由さもある。



そして、何よりも、トイレの時間が、

竜司の憂鬱を、より重くさせる。



「痛っ!」



術後、初めてのトイレ、いつもの調子で、

用を足そうとした時に、傷口に酢をかけられた様な

沁み込んでいく痛みを、股間から感じた。



彼の息子の穴を、カテーテルで

強制的に広げられた影響で、

炎症的な痛みが起きているのだ。



1〜2分で、終わらせる所が、

今の竜司は、10分かかる。



尿を出す度に、痛みが発生するので、

少しずつ放出しないと、耐えられないのだ。



ーーこの時間が、イヤだわぁ...。



洋式の便座に座りながら、顔を歪ませ、

ジッと、生理現象が終わるのを待っていた。



「あまり、水分は摂らない様にしよ...。」



1日のトイレの回数を、1回でも減らし、

拷問の様な時間を避けるべく、頭の中で

グルグルと、思案していた。



余談だが、この男性特有の生殖器の

トラブルは、1週間、続く事になる。



その間のトイレタイムを、悩ませるのであった。



「あれ?」



グッタリした顔で、哀愁漂う、

オーラを発しながら、自室に戻る際、

竜司の視界に、気になる人物がいた。



ーーあの人ってもしかして...?



まだ背中だけしか、見えないが、見覚えがあった。



「佐々木部長!」



竜司が、その人物に近づいていくと、

やはり、思った通りの人であった。



「おぉ、春田くんか。」



竜司の声がけに反応し、男性が振り向いた。



ーーやっぱり、部長だ...。



佐々木忠則、竜司が勤めている会社の

直属の上司である。



「怪我は、大丈夫?」



「手術が終わりまして、まだ安静にしないと

いけませんが、なんとか、峠は超えました。」



「そうか、不幸中の幸いだったし、

しばらくは、ゆっくり休んでいなさい。」



「お気遣いありがとうございます。」



事故の後、竜司が会社に一報を入れた時に、

対応したのが、佐々木である。



その為、ある程度の詳細は、知っていたので

コミュニケーションも、しやすかった。



ーーなんでここに...?



面会や見舞いは、予め、断りを入れたはず。



この病院に来る理由はなく、ましてや、休日だ。



アイロンでパリッと決まった黒のスーツ、

手入れされているだろう光った革靴、



周囲からは一目を置かれている一方で、

恐れられているもいる服装とは違う。



スポーツ系のジャージを着ており、

いつもは、ワックスで整えられた

ツーブロックのヘアスタイルも乱雑、



角張った顔、細目で、キリッとした眉毛、



固い表情だが、休日の父親という印象で、

どこか、穏やかな雰囲気を漂わせている。



「部長が、どうしてここに...?」



竜司は、佐々木の見慣れない姿に、

困惑しながらも、疑問を尋ねる事にした。



「あぁ、うちの娘が、今、病気で入院していてね。」



「それは...不躾な事をお尋ねして、すみません。」



センシティブな話の内容に触れてしまった

気がして、竜司は、申し訳なく思ったが、

佐々木は、あっけらかんとした返事をする。



「気にする事ないよ。」



「私は、大丈夫だけど、娘の方が心配でね...。」



竜司の心配をよそに、佐々木の方から、

内容に触れて、話しくれた。



というよりも、誰かに打ち明け、聞いて欲しい。



その様なニュアンスも含まれる言葉であった。



「難病にかかっちゃってね...。」



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