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星那《せな》Vol:18



異変は、すでに起きていた。



ターゲットの意識を断ち、あとは、

崩壊のカウントダウンが始まる

夢からの脱出をするはずであった。



しかし、一向に、空間に変化が見られない。



亀裂や裂け目も無ければ、壁や資材はおろか、

建物の欠片が落ちてくる気配すらない。



何ら、変わりがないのだ。



「終わっていない...?」



「一体...何が...?」



竜司は動揺を隠せず、額からは汗が流れ落ちる。



「かったるい事してんじゃねぇよ。」



「ここは、生きるか、死ぬか、

命の取り合いのコロシアムだ。」



「生温い事をしてんじゃねぇよ、クソが。」



ーーダァン!



非難めいた言葉を浴びせる

リュウジは、どこからか出してきた

散弾銃で、倒れてる光を撃った。



「チッ!」



リュウジが忌々しく舌打ちした直後、



ーーユラリ。



気絶していたはずの光が、ゆっくりと、

上半身を起き上がらせたのだ。



「マジかよ...。」



竜司は、顔前の出来事に、呆気に取られる。



リュウジの所有する銃に込めた物は、実弾である。



つまり、殺傷能力があり、至近距離の命中は、

すなわち、命はない。



事実、いくつかの弾丸は、父親だった人物の

身体を貫通し、流血もしていた。



だが、それは、何ら苦悶や悶絶の反応を見せず、

顔は、ミイラの様に白く、無表情であった。



目は虚、脱力しており、明確な意識もない。



「あぁ...。」



ゾンビの様な呻き声を上げる刹那、



「コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ

コロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコ

ロコロコロコロコロコロコロコロコロコロコロ」



「コロ...してやる。」



ーーブチィ!!!



心を無くした人形の声と破けた音を合図に、

光だった人物は、異形の姿へと突然変異した。



全身が黒い毛が生え、目は赤く染まっていく。



歯は、獲物を噛み砕く太い牙に、

指は、人間を容易く切り裂く鋭い爪に、

身体は、膨張する様に巨大化、



ーーボキボキボキボキ!!!



骨が折れた様な砕ける音が、聞こえる。



かつて、何万年もの時をかけて、

サル科からヒト科へ進化を遂げた人類、



その歴史のダイジェストをまざまざと

見せつける形で、光だったモノは

凶暴で獰猛な生き物へ変貌した。



「バケモノかよ...!!」



竜司は、固唾を飲みながら、魔物へと

姿、形を変わる様子に、身の毛がよだつ。



ビリビリと、肌から伝わる強烈なプレッシャー、

確実に、こちらの命を奪わんとする意志の元、



かつて、形式的には父親だった、

春田光は、人喰いクマの獣へと変わり果てた。



5mは超えるサイズから放つ、威圧感は凄まじい。



ーーグォォォォォォォ!!!!!



変身が完了した獣は、咆哮した。



ーーガシャーン!!



空間はビリビリと震撼し、窓ガラスは全て割れた。



竜司の足はすくんでしまった。



ーーヤバイ...!う...ご...け...!



しかし、笑った様に震えるだけで、

金縛りにあった様に、身動きが取れない。



「グルル...。」



理性を失った黒い野獣は、竜司へと狙いを定めた。



ーーし...ぬ...ぞ!



ーーここ...で...倒れ...る...わけ...には...!



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