日常Ⅳ:Vol1
「ハッ!?」
竜司が、意識を取り戻す。
ゆっくりと目を覚まし、身体を上半身から起こす。
首を左右し、周囲に目をやる。
彼の目の前に広がっている視界は、
すでに、別世界にいる事を確認した。
ーー戻ってきたか...。
草原には、寝転がっていた竜司の身体の跡、
上空には、暖かい太陽の光が降り注ぐ、
そよ風がなびき、鼻からわずかに薫る、
自然のほのかな香り、
メタセコイアの木々が立ち並ぶ
その景色は、竜司の世界であった。
「ふぅ...。」
帰還できた事に、ひとまずの安堵、
ふたたび、身体を草原へと倒す。
しばし、身体を弛緩させてボーとした後、
ーーそういえば、アイツはどこいった?
ふとして竜司は、一緒に、行動を共にした
自由奔放な、あの少年を思い出した。
そして、車が崖底にした直後から
この夢に戻ってきた現在に至るまで、
行方は知らない。
ーーまぁいなくても、不思議じゃないか。
竜司の夢、潜在意識の投影、
あるいは、分身的な存在だ。
しかし、気分屋な面もある。
もうミッションは終わったから、
お楽しみも無くなり、次の興味へと
目移りして、どこかへ行ったのかもしれない。
「まぁ、厄介者がいなくなって清せ...」
その直後だった。
「ハイサーい!!」
噂をすればなんとやら、あの少年が
竜司のお腹へと挨拶代わりのヒップドロップ、
「ブルァァァァァ!!!」
ヒップアタックの衝撃で、
竜司の身体は、くの字に曲がる。
光が飛び出る勢いで、目が飛び出し、絶叫する。
リュウジは、竜司の身体を
トランポリン代わりにして、
また飛び上がり、宙を舞う。
「めんそーれ♪」
着地した後、挨拶をする。
「やかましいわ!」
竜司はお腹の痛みを抱えながら、ツッコむ。
とんだ厄介に、再開早々、巻き込まれるのであった。
「っつか、どこに行ってたのだよ...」
「ふふふ...ヒーローは遅れてやってくるものなのだよ。」
「答えになってないし。」
「なんくるないさー♪」
「なんともなってないし...。」
聞くだけ無駄だと悟り、竜司は、話題を変える。
「それで、俺の夢に何をしてきたの?」
「えぇとね、デブリーフィング?」
「なぜ、そんな小難しい単語を知っている?」
「ちゃんねーからの耳学習!」
「子供が変な大人についていってはいけません!」
「あと、ちゃんねーの単語は、一瞬わからなかったし!」
どこの誰にカタカナの横文字を知ったかは
わからないが、何か目的があって自分自身の
夢にいるのだろう。
その様なやり取りをしている時であった。
「楽しそうですね。」
どこかで聞いた、馴染みのある女性の声が聞こえてきた。
「あっ!」
リュウジが真っ先に、喜びの声を上げる。
「あぁ...」
竜司は、ため息を漏らして、憂いる。
「おねぇちゃんだ♪」
リュウジは、スキップで、聖女に駆け寄っていく。
「確かに、デブリーフィングだけれども...。」
竜司は、ある意味、プロジェクトなどの
成果の報告、評価、振り返りに使われる
専門ワードに、
小難しいツッコミを入れながら、
ベンチに座っている聖女への元へと歩んでいく。
「久しぶりですね、竜司さん。」