かいぶつVol:23
不意打ちの一撃で、妖婆は身体ごと、
後ろへと吹き飛んだ。
「ギャァ!」
ダミ声で、耳に触る叫びが、空間中にこだまする。
それだけで、竜司の不快度は増し、
眉間に皺を寄せ、目つきもも鋭くなる。
この人物の現実の悪業が、容易に想像がついた。
「あぁーあ、お気に入りの
スニーカーが穢れちゃったじゃん。」
「バッチぃ、クソババ菌がついちゃったし。」
リュウジは、言葉でも追い討ちをかけていく。
「まぁでも、お前が困った人達から搾り取った
たっぷりのキャッシュで買い替えればいいか。」
「プリーズ・ギブ・ミー・マネー♩」
老婆が、顔面の痛みでうめいているのを、
気にも止めず、リュウジは、己のペースで話を進める。
「クソガキが...」
「私は、神に選ばれしモノだぞ!」
「こんな侮辱は許されない!天誅が下るぞ!」
「今に、呪われ、憑かれてこ...」
「ダマれ。」
倒れ込んでいる年老いた魔女は、
年季の入ったおどろしいオーラを放ち、
恐怖による精神的な支配、
いわゆる、マインドコントロールをしようとしている。
きっと、現実世界でも、この鬼女は、
常套手段で、悪銭を身につけてきたのだろう。
しかし、
それは、かえって、神経を逆撫でするだけであった。
リュウジは、鬼婆の不愉快な弁明を
途中で遮り、片手を思いっ切り踏みつける。
「ギャァ!」
また、黒板の引っ掻かかれた様な
ストレスになる音が発せられる。
「ナメてんの?」
「テメェみたいな泥まみれのド畜生が、
選ばれし者な訳じゃねぇだろうが。」
「図がたけぇぞ、老害(Fu⚪︎kin)ババァ。」
「ねぇ、神?」
「いつから俺は、新世界の神になった?」
いきなり、矛先が変わり、乱暴な形で、
話に巻き込まれた竜司、
面倒ごとの輪に入りながら、信心深くなった
リュウジにツッコミを入れながら、歩き出す。
「フッフフ...勝った...。」
「まだ、終わってねぇし、
ドヤ顔をする場面でもねぇよ。」
「さっさと、終わらせるぞ。」
「ヒッ...!」
竜司は、目の前にいる重い罪を犯したターゲット、
弱みにつけ込み、搾取し、
他人の足を引っ張っり、芽を潰す、
それを喜びとする悪意ある人種が、嫌いである。
先ほどの短い会話で、どういう人物像なのか、
想像に難くない。
容赦は不要である、が、大事なのは、任務だ。
「何を勘違いしている?」
「お前の事なんて、眼中にねぇよ。」
それっきり、竜司の興味や関心は、
この妖婆に向くことはない。
地面に転がっている石ころと同じ存在、
つまり、気にもかけないし、歯牙にもかけない。
いないも同然の格付けが、完了しているのだ。
「それで、何を盗めばいい?」
「えぇとね...」
リュウジが、問いに答えようとする。
「ヤメロ!触れるな!不潔!」
「神への冒涜!」
「生きて帰れると...」
二人組の盗人への憎しみで、
顔が歪ませている妖婆が、罵声で、
二人の会話を遮ろうとする。
もはや、妖怪へと変貌する勢いである。
「汚物は消毒だー♩」
リュウジは、懐からアルコールスプレーを
取り出し、魔女の両目に吹きかけた。
「ギャァ!目がぁぁ!」
案の定、目の奥にまで伝わる強い刺激で、
のたうち回る事になった。
「お前、意外と、えげつないよな...。」
「まぁねー♩」
「いや、褒めてないから。」
リュウジは、片手で髪をなびかせて、
得意げに語るが、竜司は、即座に、
否定する。
「おっ!あったよ!」
リュウジが、今回のターゲットのお宝を見つける。