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かいぶつVol:22



「マズイわ!なんてゲロ不味い血なの!」



「あげくの果てに、醜男のクセに、

坊っちゃまに近づくなんて、穢らわしい!」



「月に変わって、お仕置きよ!」



ーークセがすごい執事だな...。



ーーというか、俺も坊っちゃま扱いなの?



背後から、痛めつける音が耳に入りながら、

ギャップのある吸血鬼のキャラに、竜司は、

とりあえず、後ろを振り返らない事にした。



これ以上、未知の情報を取り入れると、

脳がキャパオーバーする気がしたからだ。



ひとまずの最優先は、ターゲットである。



隣にいる小僧と共に、扉まで歩を進めた。



「ココだねぇ。」



扉の前で、リュウジが、呟く。



「それで、このまま開けるのか?」



「まさかじゃないけど、『開けゴマ!』と

古の呪文で開く仕様じゃないよな?」



これまでのイタズラ小僧の児戯を目撃している

竜司にとって、予測不可の展開続き、



なんとか先読みしようと、考えを捻り出す



「そんな子供っぽい発想で、恥ずかしくないの?」



「いきなり、冷めた態度で言葉を返すんじゃない!」



冷たく足払われる竜司であったが、

少年の言葉から、おふざけが消えている。



「キヒッ...」



「せいぜい、オレを楽しませてくれよ...。」



緊張のカケラもないが、舌を伸ばし、

ヨダレが溢れ、彼の狂気が滲み出す。



「とりあえず、お前の狂気はわかったからしまっておけ。」



「それで、どうすんの?」



「ぶぅ、これからが本番なのに...」



腰を折られて、唇を尖らせる

リュウジであったが、もう考えはついている。



「それはカンタンだよ♩」



「扉ごと爆破♩男は黙って、正面突破♩」



餅つきの動作を見せるいつも通りの

おふざけに竜司は、ため息をつく。



「脳筋プレーはわかったから...」



「じゃあ、もう爆破するね。」



「準備しててなら、早く言え!」



二人は、駆け足で、近くの崩れた瓦礫の物陰に隠れる。



「ドォーん!」



少年の掛け声と共に、扉は、その形すら残さず、

バラバラの破片となって散っていった。



「Hoo!木っ端微塵に吹っ飛んだねー!」



「じゃあ、敵の本丸に突入じゃー!」



「わかったから落ち着け...」



出陣の勢いで、飛び出そうとする相棒を宥めながら、

竜司は、扉だった場所の先を見つめている。



およそ10畳ほどの広さ、

フローリングの床、壁は白く、

黒いテーブルが一台あった。



屋敷の中とは思えない、簡素なワンルームだ。



およそ、現代のマンションと変わらない風景である。



そこに、全身が白装束の人物が立っていた。



まだ、後ろ姿でしか確認できないが、

猫背で、身長は150cm程度、



よくよく見ると、頭の両サイドに、蝋燭が立っている。



ーー今回は、クセ者シリーズかよ...。



自分の分身である幼少期のリュウジから始まり、

エージェントボブとの超速反応、

中性的な執事のヴァンパイア...



そして、今回のターゲットもまた、

竜司にとって、一癖があるのだろう。



「き...」



「貴様らぁ...」



「見...たなぁ...」



「生きては...返さないぞ...」



右手には包丁、左手には藁人形が握られている。



その人物が振り向くと、それは、

おぞましい表情をした老婆らしき人物だった。



中世の高齢の魔女をモチーフにした姿である。



グレーの長い髪、尖った両耳にはピアス、



目は垂れ下がり、鼻は膨れ上がった様な三角形、

シワやシミが覆っている様な肌、



そして、だらしなく開かれた口元からは、

金とプラチナの歯だけが、煌びやかに

悪目立ちをしている。



ーーヤバいモノを見たのは確かだけど...。



竜司は、ボソッとターゲットの正体を見て、呟く。



そんな感想が漏れるのも束の間、



「うるせぇよ、クソ鬼ババ。」



いつの間にか、リュウジが、狂気を纏いながら、

ターゲットの顔面に、暴言と共に、一発の蹴りを入れていた。



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