かいぶつVol:15
ーーここまではOK...だな。
竜司は、頭にインストールされた屋敷や
その周辺のマップを元に、裏抜けできるルートを
いくつか検討がついていた。
だが、あの怪盗少年が、ひと派手に暴れた
回ったものだから、ほぼどこからでも侵入は
容易い状況になった。
この巨大な邸宅を囲っているブロック塀の上には、
触れたら感電する、有刺鉄線付きの電気システムが
備わっていた。
しかし、今や、停電によって無効化された。
竜司は、騒ぎから離れた場所のブロック塀を
見定め、ロープをかけて登った。
そして、有刺鉄線は、ペンチで切り抜き、
敷地内の潜入に成功した。
ーーどこだー!探し出せー!
ーー射殺も許可する!
物騒な発言が近くで聞こえてくるが、
幸い、大きな入り口前に、集まり始めているので、
中の警備は手薄になりつつある。
ーー逃げたぞ!あの車を追え!
「車...?」
竜司が、中庭から続く、屋敷の扉に近づこうとした時、
ーーブォォン!!
軽快に、アクセル全開で飛ばす、
一台の車が、屋敷前で疾走する姿が
竜司の視界から確認された。
「まさかな...」
いや、アイツの事だ、きっと原作をリスペクトという名で、
あの名車をトレースもとい、パクって、暴れているのだろう。
どこかの手錠を振り回した国際刑事ではなく、
物騒なモノを持った武装したエージェントが
追っかけてくるのは、違うが。
とにかく、これでより注意は、向こうに引きつけられた。
VIP待遇さながらの、おもてなしである。
お膳立てをされた竜司は、騒音から離れ、
屋敷の中へと入っていった。
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竜司と別れた直後、この少年は、早速、行動した。
ーーこういう時も♩あろうかと♩
大人の竜司と、瓜二つのセリフを言うリュウジ、
すでに、停電を起こす為に、屋敷の
ブレーカーには、仕掛けが施されていた。
「それっ!ポチッとな♩」
どこから出してきたのか、クイズ番組にある
回答権を得る為の赤いスイッチを押した直後、
ーーバチンッ!!
屋敷一帯の明かりが一瞬にして、闇夜に一変した。
「大・成・功!」
ガッツポーズをしながら、喜んでいる。
「さてさて、お次は...闇討ちじゃー!!」
まるで、眼光そのものを光らせながら、
物騒な発言をかます、少年リュウジ。
ソロソロと、抜き足差し足で、危険なエージェントに近づく。
古今東西、暗い夜に紛れて、敵地に奇襲をかける、
いわゆる、夜襲は、戦の常套手段である。
だが、あくまで、この子供は、非力である。
任務を遂行するに当たり、それを実際にする為には、
フィジカル的なハンデを補う必要がある。
だから、この少年は、手段を選ばなかった。
身体をしゃがませ、カエルの様に、飛び出した。
自分よりも、倍近い身長があるエージェントの股間めがけ...
「とう!」
「グフッ!」
一撃ノックアウトで、地面に沈ませた。
「良い子は、マネしないでね♩」
竜司がいたら、男性の気持ちを代弁した
ツッコミをしただろうが、アクセルが振り切った
このティーンエイジャーを止める者はいない。