かいぶつVol:5
ただでさえ、聖女の言葉は、竜司にとって、
何かしらの宣告をされた感覚になる。
それが、これまでのパターンが崩れ、
この自由奔放な少年に何かしらの言伝を
預けたのだろう。
どんな形であれ、イヤな予感しかない。
それを知ってか知らずか、少年リュウジは、
とてもワクワクした様子で、これから始まる冒険が
待ち遠しそうで、喜ばしく語っている。
「えぇっと...お姉ちゃんが言っていたのは...」
もったいぶった話をするのだから、
竜司にとっては、不快でしかない。
それすらも楽しみながら、このワンパク生命体は、
あっけらかんと聖女からの伝言を言い放つ。
「竜司さん、この子と一緒に、次のミッションを行ってください。」
「ターゲットは、この子について行けばわかります。」
「では、健闘を祈ります、だって♪」
ーーえぇ...コイツありきかよ...。
伝言を終えると、今回の主役は、胸を張り、
「エッヘン!と言わんばかりの態度で、
鼻から蒸気を吹かす様に鳴らしている。
ミッションの具体的な内容はもちろん、
ターゲットすら不明、小生意気な小僧に
ついていくしか道がない。
「...で、どこに行けばいい?」
ひとまずは、話を呑み込んだ竜司は切り替え、
小さなガイドに、ぶっきらぼうに行き先を尋ねた。
それを待ってましたと言わんばかりに、
リトルリュウジは、開口一番、
「ココだ、よん!」
ーートンッ...。
と両手で竜司のお腹付近を押した。
ーー何をして...?
少年の行動に、疑問が浮かんだ竜司だが、
直後、その身を持って理解する事になった。
気づいたら、景色は変わっていた。
そして、竜司が倒れる背後の方向には、何も無かった。
先程まで、草っ原の広場にいたはずなのだが、
いつの間にか、一寸先は闇の空間であった。
つまり、これから落下するという事だ。
「それぇ!」
ミニ竜司は、絶叫マシンを楽しむノリで、
竜司に続いて、飛び出した。
メタセコイアの公園の景色から、暗い闇に落ちる。
「ウ...ソだろぉぉぉぉぉぉ!!!」
重力に逆らえるはずもなく、竜司は、
奈落の底へと、降下していくのであった。
「Fooohhhhhh!!!」
もう一つ、とてもハジけたテンションで、
顔面いっぱいに、笑顔を広げている少年と共に、
次の夢の舞台へと移っていくのであった。