かいぶつVol:1
「ここは...?」
竜司は、寝ぼけながら、目をこすって起きた。
石田ありかと別れた後、疲労感をなんとか堪えながら、
シャワーと夜ごはんを済ませて、眠りについた。
3分も経たずに、寝息を立てて眠ったはずだ。
だが、目を開けると、すでに太陽は真上に昇っている。
それに、背中の触れている感覚が、固い。
フカフカのベッドで寝ていたのだから、柔らかいはずだ。
その違和感に、竜司は気づき、寝ぼけながらも、
疑問を発する事ができた。
しかし、次第に脳の意識が覚醒していくと、
すぐに、その原因は分かった。
「はぁ...またか...。」
メタセコイアの木々が、均一的に並び立ち、
整備された芝生、アスファルトの道が周回コースで
囲われている公園、
その中に、一つだけポツンと佇んでいるベンチ、
その上で、竜司は寝ていたのだ。
それは、同時に、夢の世界に舞い戻った事を意味する。
ーー今度は、何があるんだ...?
まだ現実では、特段、竜司が違和感を覚えた女性はいない。
強いていうならば、石田ありかで、
あり得なくもない話だが、仮に、彼女の夢に
入れたとしても、門前払いをされるのが、オチだ。
それに、成熟した人物の世界に入った所で、
まだ、発展途上の竜司が訪れたとしまったら、
逆に、世界の変化を悪影響を及ぼすリスクがある。
そこまでの思考に、竜司は至っていないが、
感覚的には、この夢の世界のルールを理解している。
だから、今回の夢に、竜司は、心当たりがないのだ。
ーーそれに...。
違和感は、別にある。
いつもならば、夢の案内人として登場する、
聖女の姿が見当たらない。
彼が目を覚ましたら、声をかけてくるのがパターンだった。
ーーどこに...?
考えた所でムダなのは、分かっている。
気配や存在感さえ、何も匂わせないし、
今までも、そしてこれからもであるが、
彼女を捉えられる試しがないのだ。
だが、今までの彼の夢の中での経験で築いた、
これまでの法則が、初めから崩れてしまった。
わかっているとはいえ、辺りに頭や目を振らせ、
聖女を探さずにはいられなかった。
でなければ、メインストーリーが進まない気さえしている。
それ位、聖女の影響力は、甚大であった。
進もうにも進めないし、かといって元の
現実の世界に、戻れるにも戻れない。
ーーひょっとして...詰みゲー...?
打つ手無しのゲームオーバー、しかもリセットすらできない。
ーーもしかして...このまま一生閉じ込められる!?
その様な最悪のバッドエンドが、竜司の頭をよぎる。
ーーあぁ、もう!どうすればいいんだよ!?
ある意味、絶望的な状況に頭を抱える竜司、
その時だった。
「カンチョー!!」
「か...?ブルアァアアアア!!!」