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童貞の覚醒Vol:12

2024/1/28加筆・修正しました。



ーー結婚って...。



新たなキーワードに、竜司は、困惑の色を浮かべる。



竜司にとって、『結婚』は、御伽噺だ。



童話の世界の様な、はるか遠い国の昔話で、

縁のないモノだと思っている。



だから、正直、ピンとくる所か、理解しようがない。



ーーこの話は一体、どこに向かうのか...。



一抹の不安を抱え、竜司の顔は、固い。



「内容が違えど、精神的な脆さを抱えている点で、

男性も、女性も、共通しています。」



「仮に、その双方が、この場に居合わせたとしましょう。」



「結婚は元より、そもそも、交際しようと思いますか?」



「...。」



心のキズを自覚する竜司には、痛い程、分かる。



もし、相手への恋心を抱いても、会話すら億劫。



ーーそもそも、顔を合わせるのも、ムリだ。



自分自身の事で、精一杯だ。



おまけに、数十年続く、不景気な社会で、

経済的に厳しい生活を迫られ、懐もキツイ。



余裕が無ければ、相手を受け入れるスペースもない。



仮に、交際にまで発展しても、

本質的な問題は、未解決のままだ。



仮初の幸せを手に入れても、永遠に、まとわりつく。



どれだけ、地位や名誉を得ても、

ルックスや言葉で取り繕い、見栄を張っても、

潜在意識は、決して、誤魔化せない。



夢は、現実を投影する。



いつか、金メッキが剥がれ、本性が現れる。



時限爆弾の様に、確実に、その期限は迫ってくる。



弱さを直視し、受け入れない限り、何度も、同じ過ちをする。



竜司の両親は、その刻を迎え、現実が崩壊した。



反面教師の、良い例だ。



竜司は、物心がついた頃から今に至るまで、

会話はおろか、声をかける事すら、難しい。



緊張して、口をパクパクさせるか、

いつも、楽しそうに話すクラスメイトや

会社の同僚を、遠くから眺めるのが、関の山。



結婚はおろか、交際のレベルすら、及ばない。



「たとえ、結婚に辿り着けても、ほぼ妥協です。」



「自分に欠けたモノを、相手に何とかしてもらおうと

依存するので、極論を言えば、誰でも良いのです。」



「その為、本当に必要なパートナーを見失っています。」



竜司は、再び、両親を顧みる。



聖女の言葉通りならば、どちらも、情緒が不安定だった。



無いモノねだりで、お互いに何とかしてもらおうと、

ツケをなすりつけあっていた。



結局、積年のフラストレーションで、離別した。



本当のパートナーでは、なかったのだろう。



内に秘められた、繊細なゾーンに、互いが勇気を出して、

踏み込まない限り、結婚は、難しいのかもしれない。



ーーそういえば...。



それと、隣に住む、バカップルを思い出す。



あのバカップルは、ルーティーンの様に、

いつも、夜な夜な、性行為を繰り返している。



実の所、臭いモノに、蓋をしているだけかもしれない。



お互いの心の傷口を見せない為に、

それか、見せ合わせ、舐め合わす様に、

性欲をブラフに、不満の捌け口としていたか。



ーーバカはバカでも...。



ーーどうしようもないバカップルにイラつくとか...。



ーーバカらしい...。



あれほどまで、イラついていた対象は、

憐れみへの感情へと移り変わっていた。



結局の所、現実から目を逸らした。



不健全な関係なのかもしれない。



それは、キズ口に塩を塗る行為に等しい。



ーーいつか、ツケが来るのかもな。



竜司は少しばかり、スッとした気持ちになった。



バカップルに、多少の同情心が出たのか、

拗れた童貞のやっかみが、スッキリしたのか、



複雑な気持ちではあったが、少なくとも、

あのカップルを羨む気持ちは、消失していた。



世間から見れば、竜司は、敗北者サイドに映る。



だが、別視点で見れば、実は、彼らの方が、

タチの悪い、負け組に映っている。



そういう目に見えない事情がわかっただけでも、

竜司のコンプレックスに、光が差し込んでいく。



「ちなみに、優しい人が好きと言う人がいるでしょう?」



ここで、余談を、聖女は挟んできた。



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