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日常Ⅲ:Vol5



そういえばだが、これも後日談になるがーー



松田峰香のいた職場は、彼女の入院以来、平穏を取り戻した。



便宜上、長期の休養扱いとなっているが、

ウワサが噂を呼び、今では、あの鬼上司は、

二度と、会社にはやって来ない、



これが、社内での共通認識となっている。



それのおかげか、涙を流して歓喜の声を上げる

社員もいたとか、感動のあまりに飛び上がり、

天井に頭をぶつけて入院した社員もいたとか、



とにかく、重苦しい雰囲気が

風が吹いたかの様に、吹き飛んだ。



一緒に苦難を乗り越えた戦友、同胞の様な絆が生まれたらしい。



それまでとは、全く違うムーブメントが生まれ、活気が蘇った。



各々が、これまでの鬱憤を晴らす為に、

思う存分に働き出し、彼女のいた部署は、

一気に、社内トップに躍り出る事になる。



売り上げや社内の生産性が、飛躍的に向上したのだ。



もはや、松田峰香という悪代官が成敗された事で、

共同体の様な団結力が、彼らの強みとなっている。



また、「吊り橋効果」という心理学の用語がある。



彼女の存在自体が与えてきた不安やプレッシャーが、

どうやら、男女の恋愛感情を刺激したらしい。



彼女の亡き後、何組かのカップルが誕生した。



中には、年内に結婚をする組もおり、社内では祝福モードだ。



人の噂も七十五日、時間が経つと共に、

松田峰香の存在は、人々の忘却の彼方へと

去っていった。



あれだけ、狂気に染まってもなお、しがみついていた

現実での彼女の居場所、地位も肩書きも、消失した。



ちなみにだが、彼女に代わり、新たな上司が赴任してきた。



松田峰香と同年代の女性だ。



初めて彼女が人事部から紹介された時、

一瞬、その場にいた社員達は、過去の悪夢を

思い出して、一同、顔を青ざめていた。



一部の社員は、紹介中に気分を悪くし、途中退席をしていた。



存在はいなくなっていても、松田峰香の残した傷跡は、

彼らの心に、暗い影を落としていたのだ。



竜司もまた、再び厄介ごとに巻き込まれるのではと、

背中に汗を流しながら、事の経過を見守っていた。



だが、それも3日足らずで、杞憂に終わる。



前任者と違い、一言でいうと、180度の真逆だ。



仕事が的確で、ミスやトラブルが起きても、

率先的に、修正するどころか、アフターフォローも

完璧だ。



また、事前に、情報を聞かされていたのか、

日頃から、社内に1日でも早く馴染もうと、

コミュニケーションを積極的に行っている。



一度、竜司が休憩の際、自販機で、その上司と遭遇した。



ーーデジャブ!



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