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魔女の呻きVol:22



ーーギィ...



扉を開いた先は、何もない空間だった。



広間というよりかは、広場の表現に近いかもしれない。



橋の様な十字路の通路と、その交差している中央には、

天井から底辺まで、繋がっている巨大な円柱がある。



くり抜かれたかの様な、真ん中の空間には、台座があった。



ーーPPPP!



「やっと見つけた...。」



かろうじて、キリアンの視界からでも、

アラームが鳴る、スマートフォンを確認できた。



あの通信機器の着信に応答すれば、この夢から脱出できる。



ひとまずは、逃れられる事だけは分かったので、安心だ。



キリアンは、気を抜かず、扉前の小階段を上がり、

中央へと進む。



石橋を叩いて渡りながら、慎重に、辺りを警戒している。



超高層ビルの最上階だから、上から狙われる心配はなく、

入り口以外で、入ってこられる場所もない。



しかし、先の神出鬼没のエージェントの事もある。



通路の背面からや天井から、突然、襲撃を受ける事も

ありえなくはないのだ。



スマホだけに視界を奪われない様に、

キリアンは、ゆっくりと歩を進めていた。



距離は50m、時間にしては、3分もかからなかった。



しかし、彼にとっては、ゆうに1時間を超え、

とても長く、遠い場所の錯覚に陥る体感であった。



その額からは、汗が流れていた。



一歩ずつ、地面を踏み締めながら、

ようやく、スマホを手に取れる距離にまで

来る事ができた。



「はぁ...全く、随分と手こずった...。」



ため息をつき、これまでの苦労を思い浮かべながら、

キリアンは、着信音が鳴り続けるスマホに、手を伸ばす、



その時だった。



ーーパァン!



「うぅ...。」



数メートルとない距離から、呻く声がした。



「こんな事だろうと思った...。」



キリアンの手には、スマホではなく、銃が握られていた。



予想が当たり、最後まで面倒事に巻き込まれる、

お約束の展開に、やれやれと言わんばかりだった。



ゴム弾が命中した脇腹の痛みを悶える、彼女がいた。



「どうして...。」



襲撃に失敗した松田峰香は、キリアンに疑問を呈した。



「ここに来る途中、髪の毛や破れた服の生地が落ちてた。」



「お前が、先にいるなんてバレバレだっつぅの。」



キリアンは、吐き捨てる様に、彼女の質問に答えた。



すでに、松田峰香は、狂ってしまっていた。



整えられていた髪は、乱雑のボサボサ状態、

全身を掻きむしったであろう、引っかき傷、



それによって、破れてしまっている衣服、

片方しか、履いていない靴...etc



見るからに、荒んでいる様相だ。



目の焦点も定まっておらず、手は震え、依存症の様にも見える。



最上階へと先回りしている途中、

イラ立ちながら、自傷行為をしていたのだろう。



わかりやすい位に、一定の距離感覚で、

束になった髪の毛や、手のひらサイズの

破けた生地が落ちていたのだ。



おまけに、殺気だっており、近くにいる事も、丸わかりだった。



キリアンは、スマホを左手で取ろうとする直前、



彼女が、姿を現して銃を抜こうとするのを

視界で確認していた。



彼の右手は、腰に手が回っていた。



彼女よりも早く、銃を抜いて、撃っていたのである。



とてもお粗末な、彼女との最後の対峙だ。



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