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魔女の呻きVol:19



ーーバァン!ドォン...!



時間の経過と共に、ビルの崩壊が進んでいる。



廊下に飾られていた著名な絵画や銅像が

無惨にも転がり、損壊し、原型を保っていない。



あちらこちらで、煙が立ち上がっており、

ひと呼吸するだけで、喉が焼ける熱を帯びている。



うっかり、深呼吸をしようものならば、

声が出なくなる、火の魔の手が迫っている。



キリアンは、崩壊が進むビルを駆け上がっていく。



ーーバァァン!!



「グッ...!!」



10m手前で、突然、廊下の一部が爆発した。



その衝撃で、キリアンの身体が吹き飛び、

横の壁に叩きつけられた。



痛みで、視界がボヤける。



このままいっそ気絶して、眠ってしまいたい、



限界を超えそうな彼の肉体は、危険信号を発していた。



だが、休み暇も与えられない。



ーーパン!パン!パン!



エージェントが銃を撃ちながら、追いかけてきている。



幸い、前傾姿勢で走っている為、

弾は、壁や廊下、落石の破片に当たったりと、

狙いが、ブレていた。



急ぎ、キリアンは、身体を無理やり起こす。



ーードォン!!



今度は、背後から火の手が上がり、爆発した。



衝撃波と共に、また全身が前方へと宙を舞った。



「うぅぅ...。」



ーー厄日かよ...。



いつにも増して、襲いかかってくる災難に、

言葉を発する余裕もないまま、キリアンは、

嘆くしかなかった。



しかし、不幸中の幸いという言葉がある様に、

彼には、悪運が味方している。



爆発と共に、廊下の道が閉された。



よく見てみると、一捻りで相手を葬れる

たくましい肉体の黒人エージェントが、

瓦礫の下敷きになっていた。



あまりにも一瞬で、目の前での出来事だから、

回避はおろか、声を上げる時間すらなかったのだろう。



キリアンは、再度、ゆっくりと

手に膝をつきながら、重い身体を起こし、

階段を登り始める。



頂上は、近い。






--------------------






最上階は、静けさが漂う空間だった。



このエリアだけ、全面クリアガラス、

360度、どこからでも景色を見渡せる球体の仕様で、

5〜6本の螺旋状の金属製の柱に支えられている。



キリアンは、その道へと通じる廊下にいる。



ざっと、30mの距離だ。



「やっと、着いた...。」



必死の思いで、追手から逃げのび、

長い階段を登って体力を消耗して、

出口の一歩手前までやってきた。



下のフロアは、崩壊しつつあるのだが、

まだ最上階には、その影響が及んでいない様だ。



「さっさと...帰ろう...。」



これ以上、しんどい状況に晒されるのは

勘弁したいキリアンは、最上階フロアに繋がる

歩みを進めた。



最後の廊下も、全面ガラス仕様で、下が丸見えだ。



キリアンは、唾を飲み込みながら、

高所恐怖症を堪え、一歩ずつ近づいていく



ーーあと少し、もう少し...。



そう自分自身に言い聞かせながら、

半分の距離を超えた辺りの時だった。



ーーパァン!



発砲音が響いた。



その直後、キリアンの右肩が、出血した。



「な...何が...。」



遅れてやってきた痛みで、キリアンは身体をよろめかせた。



倒れない様に、全身で踏ん張り、左手で、

肩の痛みを抑える様に握った。



混乱する彼をよそに、一つの声が、彼の耳に届く。



「捕らえたよ、ヘンダーソン君。」



エージェント・ボブが、待ち受けていた。



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