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魔女の呻きVol:15



「返事は?」



キリアンは、主従関係をハッキリさせる為に、

峰香に踏み絵を迫る。



「ワン...。」



もはや、二人の関係は、ここに決した。



今、この空間の支配者は、キリアンだ。



「わかりゃいいんだよ。」



現実と違い、彼女が屈している姿は、滑稽だった。



「お前ってさぁ...ほんっと哀れだよな。」



なお、キリアンの言葉攻めは、継続中である。



「適当な男に尻尾を振ってはフラれ、

挙げ句の果てには、婚約破棄か...。」



「笑えるよな?」



「...。」



言葉にはしないが、峰香の表情は、怒りそのものだ。



火に油どころか、ガソリンを注いでるのだが、

変装している竜司は、ある種のゾーンに入っていた。



次から次へと、湯水の如く、相手にとって嫌がる、

屈辱的な言葉が湧いてくる。



しかも、ただの誹謗中傷ではない。



相手が無意識に、自覚していた事、



どんな現実から目を逸らして生きてきたのか、



その手痛い、弱点をピンポイントで突いてくるのだ。



表面的に捉えれば、ただの言葉の暴力なのだが、

実際の所、相手はぐぅの音も出ない程に、

本質をえぐられている。



長年、見て見ぬフリをしてきた問題に向き合わされている。



だから、峰香にとって、キリアンの煽り文句自体よりも、

そこに含まれているニュアンスに、イラ立っている。



このまま生きていけば、なかった事にできた。



だが、キリアンという魔王が、そうはさせなかった。



「男のせいにすれば、ラクだよな。」



「自分と付き合った野郎が悪い、

ハズレクジだった、運が悪かった。」



「そうした言い訳を重ねてきた、結果、今、どうだ?」



「50年以上、ムダに生きてるからわかるよな?」



キリアンの次の言葉が発される前、



峰香の防衛本能が働いたのか、



「やめて...!」



その表情は、苦痛に満ち始めていた。



5歳の子供がダダをこねる様に、首をフリ、

言葉を聞かまいと、現実から目を逸らそうと

必死だった。



「お前は今まで、男に復讐する為に、男を利用してきたんだよ。」



「お前にとって、結婚や恋愛なんて、どうでもよかったんだ。」



「イヤァーー!!」



峰香の自我は、崩壊寸前だった。



松田峰香、彼女は幼少期、父親から虐待を受けてきた。



母親も、ネグレクト体質で、幼い彼女を

庇う仕草をあまり見せなかった。



その心の傷で、男性にネガティブな反応を示す様になった。



それは、復讐という形になって現れる。



あえて、男性に対して、無理難題を吹っかける。



できなければ罵り、できたらできたで、嫉妬する。



恋愛になると、それがより顕著に出る。



過去、7股オトコとの恋愛でも、

彼女は、付き合ってはいけない人種だと

わかっているのに、あえて、首をツッコむ。



そもそも、価値が低い男性だと、マウントをとりやすく、

彼女の歪んだ自尊心も満たされるからだ。



そして、あえて、悲劇的なシチュエーションを

作り出し、同情を誘いながら、彼女を崇める

都合の良い人も作ろうとする。



つまり、彼女は、隠れビッチだ。



男性の価値を乏しめる一番カンタンな手段は、

性のエネルギーを奪ってしまえばいい。



だから、彼女は、あえて男に抱かれた。



たとえ、7股するダメ男でも、平気で身体を許した。



男性に対する不信感を露わにする一方で

自らの身体をも利用し、男のエネルギーを

奪い取ろうとする。



アンバランスで、矛盾した想いがあった。



松田峰香の復讐心が、絶えまなく続いてきた。



男性に呪いの魔術をかける悪徳魔女、



それが、彼女の素顔といってもいいだろう。



これまでの悪行が、白日の元に晒されたのだ。



ーーピシッ!



どこかで、建物が崩れ落ちる音が聞こえてくる。



彼女の夢の終わりの、カウントダウンが始まる。



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