魔女の呻きVol:13
ーーこういう時に限って...。
ここでもまた、竜司特有のハードラックが発動した。
タイミングよく、悪名高き魔女の登場だ。
もう逃げ場はない。
ーーさぁて...どう切り抜けようか...?
キリアンの目つきが、狩人へと変わる。
魔女狩りの開始だ。
ベッドルームに戻ると、彼女は着替えを済ませていた。
チェック柄の赤と黒色が入り混じった、
およそスウィートルームには似つかわしくない、
ラフなパジャマ着をしている。
「早く...来ないの?」
峰香の方は、酒が抜けていないのか、
男女の関係になる事、前提で話を進めている。
「シャワーを浴びるよ。」
キリアンは、彼女の期待には応えず、
そのままシャワールームへと入っていった。
鍵を閉め、途中で背後から、彼女が入ってこない様に、
施錠もしておいた。
ーーガチャ!ガチャ!
案の定、彼女が、ガチャガチャとドアノブを
回す音が聞こえてきた。
ーーどんだけぇ...。
キリアンんは、若干、彼女の態度に引きながら、
気づかないフリをして、シャワーを流した。
5分後、身体の汚れを落とし、ベッドルームへと戻る。
「待ってたわよー!」
峰香が、今か今かと待ち構えていたかの様に、
キリアンの前に立ち塞がっていた。
しかも、ご丁寧に、胸元を強調しているではないか。
ーーこういうの萎えるわ...。
珍しいかもしれないが、竜司は、
こういうあからさまな態度で媚びる
人間が、苦手であり、嫌いだ。
先の古田ゆきめの時もそうだが、
色目遣いで、気を引こうとする姿勢は、
心の底から、冷めさせる。
竜司に限れば、吐き気すらもよおす。
「それにしても...。」
「本当に、かっこいいわね。」
「すごいイケメン!その鋭い眼もタイプだわ!」
勝手に盛り上がる峰香に、気分がゲキ下がりのキリアン。
ーー面倒クセェババァだ...。
徐々に、怒りのボルテージが上がっていた。
先程から、自称美魔女を現実でも吹聴する、
鬱陶しい、この熟女に、キリアンは同情も、
容赦もなかった。
「さぁ...私と...」
「うるせぇよ。」
峰香の発する言葉を、キリアンは切り裂いた。
「おい...。」
キリアンの眼光は鋭く、彼女を突き刺す。
「え...。」
豹変するキリアンの態度に、峰香は身体は、
凍った様に固まる。
「さっきから、俺に気安く話しかけんなよ、クソババァ。」
「俺と話したければ...」
「3回周って、『ワン』と言え。」
「そうすれば、俺との会話を一言、許可してやるよ。」
調教という名の鉄槌が、下された。