宇宙ペンギン トリスタン
「例えば彼処に鳥が見えるだろう?」
部室の窓から見える電線に止まっているカラスを指して部長はいった。「実はな、あれは鳥ではないんだ。」
「いや、あれはどう見てもカラスで、カラスは鳥ですよね?」
ニヤリ、と部長は頬杖を付きながら意地の悪そうな笑みを浮かべた。
「そうだ。あれはどう見てもカラスで、鳥だ。だが実はあそこにいるカラスの内臓が全て機械でできていたとして、カラスとしての特徴は外観だけだとしたら、果たしてそれはカラスで、鳥と分類することができるか?」
「たしかに、機械を鳥と言うのは厳しいかもしれませんが、それって鳥以前に生物ではないじゃないですか。」
「見分けが付けば機械、つかなければ生物。分かるか笠鷺。見方次第で世界は変わると言うわけだ。では、本題に入ろうか。」
これを見てほしい、そう言い先輩はタブレット端末を手渡してくる。
「笠鷺、君はこの映像をどう見る?」
「どうって、ペンギンに見えますけど、なんですか?これ。」
タブレットにはペンギンのような生物が短い羽を上下させながら空を飛んでいるような映像が映されていた。
「コラージュ…?なんでしょうか。」
チッチッチ、先輩が人差し指を振った。
訝しげに彼女に視線を向けると自信アリ気、あるいは得意げといった様子で笑顔を見せている。
「笠鷺、これはコラージュではない。正真正銘本物で間違いない。」
「なら、その根拠を教えて下さい。」
「根拠も何も、その映像を撮影したのは私だ。それとも、君は私の言うことが信じられないか?」
「まぁ、こんなものを見せられてるんですよ?にわかには信じがたいというのが僕の本心です。」
そう言うと先輩は頷きながら「最初は私も目を疑ったからな。実際に目撃した私ですらそうなんだから、君がそう思うのも仕方ない話だ。」と言った。
「これを見たまえ。」
タブレット端末をスライドさせて、先輩は1枚の写真を表示させた。
「可愛いですね。」
「確かに可愛いが、注目すべきはそこじゃない。ここだ。」
写真のある一点を