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九 夜の店。セクハラ注意。

 八月二十五日、深夜。


 スマホの着信がえげつない事になってる。取り急ぎずぶ濡れスーツの山田(仮)さんと骨チラ少女の川井(仮)さんに挟まれながら自身の安全を報告せねば。――誰に?


 ブラコンを発症したあえかはダメ。

 ねねに電話するのは負けた気がする。


 消去法で母さんだ。電話回線、空いてるかなぁ?


 ぷるる、ぷ……


「トモ!? 無事なのっ!?」

 無事、繋がった。繋がってるね!


「よく分かんないけど何とか。今コンビニだよ」

「さっき悲鳴が聞こえて!! 母さん達……!!」

 スピーカーから嗚咽が漏れる。


「兄さん! 無事なんですね!?」

 今度は涙声のあえか。お兄ちゃんは無事(?)だよー。


「早く、早く帰ってきて……お兄ちゃん……!」

 おや、昔の呼び名が出て来たな。相当心配させてしまったようだ。帰ったら一騒動かも。


「朝春! 無事で良かったよ! あたしは……あたしは……! うわーん!!」

 ねねまで泣き出した。


「あの、もうちょっとしたら帰るから。バニラとピザポテチは忘れてないから」


「うわーん!!」


 通話を終え、おっぱいさんに言う。


「これってどういう状況なんですか?」


「まず、おっぱいさんは止めて下さい。自分は三郷みさとあきらです」


 心を読む妖怪、さとりがあえか以外にも存在していたとは!?


「声に出てますよ……。自分は不死者にして女吸血鬼。昼間を歩くヴァンピレス。デイライト・ウォーカーたるカーミラです! 以後、良しなに!」


 ツッコミ所が多すぎるよ!? ヴァンピレスでデイライト・ウォーカでカーミラの三郷さん!


「……自分はそういったファンタジーに疎いのですが……。一部のゾンビに自己紹介はそうしろと言われて……」


 革ジャン姿の巨乳美女がもじもじと恥じらう。また俺の扉を開ける気か!?


 アンタが喋る度にこっちの質問が増えていくんだよ! 俺の頭を一旦整理させてくれ!



 骨チラ少女の川井(仮)さんがナニか持ってきた。ビニールに包まれたソレには『トランクス・Mサイズ』の文字が! もうやだ。この世界。


 三郷さんと山田(仮)さんに一時の別れを告げて、川井(仮)さん……ちゃんかな? と共にバックヤードへと赴く。川井ちゃんの先導でゾンビの皆さんが道を譲ってくれた。あの交差点での恐怖が今では懐かしい。


 ロッカーから店員の制服を引っ張り出し、俺に突きつける川井ちゃん。やっぱり心臓は止まってるんだよね? あくまでも、あくまでも知的好奇心の現れの結果。

 彼女の心臓の鼓動を確かめるべく、俺の両の手のひらが川井ちゃんの胸部に近づいていく。無表情の川井ちゃんからビンタを喰らった。バチン!


 ちょとサイズが大きいが許容範囲内だ。乾いた衣服と川井ちゃんが持ってきてくれた下着に着替え人心地つく。川井ちゃん、缶コーヒーちょうだい。微糖で。――無視された。


 コンビニ店員に変身した俺は再び三郷さん(自称カーミラ)と相まみえる。山田(仮)さんはどっか行った。


「最初に聞きたいんですが、俺ってやっぱり、その、既にゾンビに……?」

 聞きたくないが一番気になる。


「いえ。生きた人間ですよ?」

 オーケー。ひとまず安心。


「まず、君の……失礼ですがお名前は?」


 こちらこそ失礼しました。蘭堂朝春、十七歳、童貞です!


「では朝春君と」

 お好きにどうぞ。


「今の世界で君たちがゾンビと呼ぶ存在。彼等はウイルスに感染し、死亡し、それでも動き回る不死者。アンデッドなんです。政府広報やネットでの情報収集はなさっていますよね?」


「モチロン。ゾンビがビンタをかましてくるのは新情報だけど」


 モチロン……だ。モロチンでは無いぞ! 気を付けろ!


「それは後で説明します。とにかく、朝春君はウイルスに対する抗体を持っているんです。まだ研究が始まったばかりですが、生まれつきの体質では無いか。という説が有力です」


「……? 生まれつき? 

 とにかく、俺の体内にゾンビウイルスに対する抗体がある。だから俺はゾンビに噛み付かれてもゾンビ化しないと?」


「はい。正確にはゾンビウイルス抗体保有者。略して抗体者はゾンビ化せず、何故かゾンビの襲撃対象から外れます。仲間と思われているのかも知れません」


 だったら何故ビンタ?


 そろそろ情報がパンクしてきた。気分を落ち着かせるために川井ちゃんのスカートに手を伸ばす。間髪入れずにかかと落としが俺を襲う。君、空手経験者?


「じゃあ俺はゾンビの集団と遭遇してもスルーされると?」


「されますよ。場合によっては保存食品のお土産が貰えるかもです」


 母さん、あえか! ついでにねね!

 イージーモードに変更のお知らせだ! やったー! 今夜はハンバーグだ! さっきカレーと一緒に食ったよ!

 テヘペロ!

 今日までの二十日余りの恐怖と焦りは何だったんだ! チートがあるならステータス画面に表示しとけよ! 苦情窓口はドコだ! 訴えるぞ!!


「えーと。それでですね。朝春君」

 ハイ! なんでしょう!?


「君の血液を自分に飲ませて下さい」

「イヤです」


「この辺りのゾンビは自分の支配下です。彼等は自分に忠実に従う兵士です。君は近くのマンションの五階角部屋」


「…………」

 店内で若い女性のゾンビを探す。向こうにOL風ゾンビ発見!


「脅迫ではありません。自分は君が外出してくれるのをずっと待っていたんですよ。必ず、コンビニを目指すと思って山田に待機して貰った甲斐がありました」


 山田さんから(仮)が外れた。


 OLゾンビへの道は、腕を掴まれ阻まれる。


「自分の食料は、抗体者。君の血液なんですよ! それに言いにくいですが、自分と朝春君には既に血の契約が成されています」

 な、なんだってー!!


 女吸血鬼の食料が童貞の生き血。世界がファンタジーに染まる。





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