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八十 ラーメン。裏の取引と彼の心情を見抜け。

 各人をマイクロバスに乗せてマンションに帰ってきた。アリス達を先に降ろして、桜花にマイクロバスを収納して貰う。


 桜花が居れば『亜空間収納』で簡単に済むが、通常では外門と内門を経由して面倒な手続きを終えないと敷地内に入る事は許されていない。


 本当に、マジで面倒だな。誰が考えたんだ? ねねか? 俺だった。


 とにかく、長い一日が終わってようやく帰って来られた。まゆおばさんと健治さんは畑や鶏小屋を興味深く観察しているようだ。


 今日の作業は既に終了しているので住人は居ないが、一応紹介しないとマズいだろうな。

 明日の朝礼で紹介するか。



 当マンションでは畑やバリケード作成、休憩所整備等の仕事があるので結局、住人全員が毎朝何らかの作業に従事する形になった。


 環境を良くするのは勿論だが、たまに与える高級食材等で釣ると良い感じに働いてくれるから重宝している。


 拘束時間は八時開始から十五時終了の七時間。昼休憩一時間と適宜五分休憩。

 給料を無視すれば、最高のホワイト企業と言っても過言ではあるまい。



「まゆ……さん……?」

「巴さん!」


「久しぶりー!」

「久し……ぶり?」


 仲が良かった二人の再会だが、母さんの頭の上には疑問符が浮かんでいるように思える。


「よく分かんないけど、死んで生き返って上位種になったら若返ったのよー」


「トモ!?」


 気持ちは分かるけど母さんは若返らないから!


「無理だから。まゆおばさんは超特殊な事例だから、だから落ち着いて! 母さん!!」


 気持ちは分からないでも無いけど、再現は不可能だから!


「お久しぶりですね。ねねが随分世話になったようで、何と言ったらいいか……」


「……? ああ、健治さん……だったかしら? お久しぶりです」


 母さんも健治さんとは面識が浅かったようで。しかし、かろうじて顔と名前が一致したのは驚嘆に値する。俺だったら「は? あんた誰?」状態だ。


 だが、母さんは頭を下げる健治さんにあまり興味が無いようだ。友人との再会に旦那は邪魔だってか?

 確かに面識は殆ど無いだろうが、父親とはかくもないがしろにされる存在だっただろうか……


「健治さん、夕食は自家製チャーシューとチャーハンと餃子ですよ。期待して下さいね」


「あ、ああ。それは楽しみだな。それはそうと蘭堂君、ちょっと込み入った話をしたいんだが、いいかな?」


「じゃあ、俺の部屋で……」


「いや、出来れば周りに誰も居ない方が良いんだが」


「それは認められないよ。お前はねねの父親らしいけど、ボク達はお前を信用したわけじゃ無いからね」


「エリー……」


 君の警戒心は賞賛もするし、見習うべきだとも思うが、その口調は如何なものかと思うよ?


「ご主人様が何と言おうと契約した抗体者の護衛は絶対条件なんだからね?」


 それは初耳なんだけど?


「そうか。……まぁ、それ程大した話でも無いから良いだろう。外で話そうか」


 ねねの父親とは言え、初対面の、しかも『王階級』相手に警戒心全開のエリー。

 あきらさんは『殿下』呼びしてたと思うんだけど、この差は一体?


 夕飯の支度をする母さん達に声を掛けると、心配だからと言ってあきらさんと祭さんと桜花も付いてきた。健治さんの信頼度はどうなっているんだ?


 ちなみに若葉さんは万が一の時に足を引っ張るからと辞退したが……あの顔は非常時に手を出す気満々の顔だ。


 結局四人の契約者を連れて、二階の集会所までやってきた。今更内密の話も何もあったものじゃ無いが……


「彼女達にとって私は信用出来ないし、君の命が何よりも大事だという事だろう。まぁ、まゆやねねに聞かれなければ構わないよ」


「で? 改まって何の話ですか?」


「うん。私達……私とまゆはここを離れて自衛隊の世話になろうと思っている」


 それは構わないんだけど、まゆおばさんの了承は?


「あー、いや、それはこれからだが……」


 それってちょっと問題じゃ無いの? 宮湖橋家のヒエラルキーはまゆおばさんが頂点みたいだし、健治さんが勝手に話を進めたら(こじ)れるだけじゃ?


「しかし私は決めたんだ。聞けば蘭堂君はテロ組織殲滅に消極的だね?

 私が君に意見を言う筋合いは無いが、だからこそ私は自衛隊と共に、テロ組織殲滅の手伝いをしたいと思っているんだ」


「それは……頑張って下さいとしか言いようがありませんけど。

 健治さんはまゆおばさんと契約した以上、常に一緒に居ないと死んじゃいますよ?」


 契約者の血を一定期間毎に吸わないと上位種は死ぬ……らしい。


「だから君にお願いがあるんだ。一緒にまゆとねねを説得してくれないか?」


 ……あんた、今何て言った?


 黙って聞いていたあきらさん達も微妙な表情で健治さんを見ている。


「あの……いくら何でもそれは……俺が間に入ったら余計(こじ)れますよね?」


「しかし、私にまゆを説得出来るとは到底思えないんだ」


 戦う前から負け宣言かよ。だからあんたは尻に敷かれてるんじゃないの?


「朝春君、これはまゆさんを交えて話すべき案件だと思いますが……」


 俺もそう思う。でもそろそろ晩飯の時間だしなぁ。


「続きは晩飯後って事で。まゆおばさんとねねも交えて話せば良いんじゃないですか?」


 て言うか最初からそうしてくれ。俺には結果だけ教えてくれれば良いから。


「やはり……そうか……いや、分かってはいたんだが……」


 彼の煮え切らない態度に段々イライラしてきた。


「じゃあ、俺が食事の後に話の切っ掛けを作りますよ。健治さんの気持ちを代弁してまゆおばさんを説得すれば良いんですよね?

 悪いようにはしませんから、任せて下さい」


「そ、そうか! 情け無い話だがまゆには頭が上がらなくてな……いや、頼りにしているぞ、蘭堂君!」


 にんまりと笑う俺に頭を下げる健治さん。あきらさん達は軽い溜息を吐きつつ、彼を生暖かい目で見守っていた。


 彼女達は俺が何をやらかすのか、多少の想像が付いているようだ。


 内容が内容なだけに、面白可笑しく引っかき回すワケにもいかないんだけど? ちょっと煽るだけだから期待しないでくれ。


「話が纏まったなら、戻りましょうか~」


 何かノリが軽いな。……それなりに警戒していたようだけど、もしかして興味本位で付いてきたんじゃ無いだろうな?


「そのようなワケがあるか。皆、主殿を心配しているのじゃぞ?」


 お、おお。そうか、そうだったか。疑ってしまったようでちょっと心苦しいな。


 そして。


 蘭堂家三人、宮湖橋家三人、俺の契約者五人、朝日奈さん一人の計十二人で食卓を囲む事になった。六人掛けのテーブルが二セットなのでギリギリ丁度の人数だが、キッチンのキャパシティは限界を超えていた。


 五○二号室側のキッチンと二手に分けて、母さんを中心とした女性陣が調理する中、俺を含めたその他が皿や料理を運ぶ。


 最後に豚骨醤油ラーメンを仕上げて各人の前に配り、皆揃っていただきます。


「もやし……じゃと!?」


 そう、目の前のラーメンには茹でたもやしとキャベツが少量だが、乗っていた。


「巴さん、もやしの栽培に成功したんですか?」


「これは冷凍もやしですよ」


 あきらさんの問いに、ドヤ顔で説明するあえかをスルーして一口。もやしはともかく、厚切りチャーシューはトロトロでスープには背脂まで浮いているコッテリ仕様のラーメンだ。脂が旨い。


「兄さん? 私とエリーさんがわざわざ業務用スーパーまで行って回収してきたんですから、感謝して食べて下さいね」


 返事代わりに麺を盛大に啜ってみた。


「もう、お行儀がわるいですよ」


 麺類は音を立てて啜らない? 面倒なマナーだな。


「それにしても背脂ラーメンって初めて食べたけど、想像してたよりもクドくなくって美味しいわ~」


「自分は初めてではありませんが、それでもこのラーメンは美味しいです。

 チャーシューもしっとりトロトロとしていて素晴らしい出来だと思います」


「二人ともありがとうね。ラーメン自体はインスタントだけど、手を加えるとここまで美味しくなるんだから馬鹿にしたもんじゃ無いわね」


「ラーメンも美味しいけどチャーハンも中々じゃない? 卵は使ってないみたいだけど、かいわれ大根と細かく刻んだたくあんが良いアクセントになってるわー」


「うむ。ラーメンがコッテリな分、チャーハンはあっさり目かと思えば、たくあんの食感とかいわれ大根の辛み。中国山椒の辛みと痺れ。そして少量だが、辛さをまとめる梅肉の酸味。

 単なる付け合わせかと思っておったが、背脂コッテリラーメンに酸味と辛みのチャーハンとは……

 この組み合わせは素晴らしいと言わざるを得んな。惜しむらくは餃子が冷凍食品だという事じゃが……箸休め的な意味合いでは、これはこれでアリじゃな」


 相変わらず桜花の母さんの料理に対する評価が高すぎる。


 確かにチャーハンは桜花の言う通り酸味と辛みが効いているが、どちらも控えめだ。やや薄味にも感じられるが……いや、味はちゃんと感じられる。

 これは何らかの出汁を……?


「旨味調味料よ」


「何と! 味の○か!?」


 ちょっと桜花、いくらなんでも○の素は無いんじゃないか?


「桜花ちゃん正解よ」


 そうなのか。料理上手な母さんが旨味調味料を使うのはあんまり想像出来なかったが、そもそも料理をしない俺が口を出す筋合いは無いな。


「巴さん、チャーハンのおかわりはあるか?」

「ひなた、ちょっとは遠慮しろ……」


 そのやりとりを切っ掛けにしてチャーハンのおかわりが相次いだ。


 卵抜きのチャーハンなんて……って最初は思っていたが、米と具材を炒めた料理と考えればアリだ。

 むしろチャーハンに卵は無くても良いんじゃねぇの? と、真剣に考えてしまうほどだ。


 チャーハンに於ける卵は具材の一つに過ぎなかった筈だ。ならば卵は必要無し。

 チャーハンとは白米を炒めたもの。白米を油で炒めれば定義の上ではチャーハンになる。そこに卵が入る余地は無いな。


 等と、チャーハンの定義に対して思考を巡らせてみた。


 チャーハンとは炒めた飯。取り敢えず、卵の扱いは自由だと、俺は思う。


「ちょっと多めに作るからね! 余ったら明日の朝食べるから気にせず好きなだけ食べてね!」


 上位種は食事を摂る必要が無いと聞いていたが、彼女達の食べっぷりを見ているとちょっと、疑わしくなってきた。


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