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四十九 変電所と鳥。後始末は油断禁物。

「散々いたぶってくれたお礼をしなければなりませんね」


 帯電した体をパチッパチッと鳴らしてエリーに腕を振るう。


 何かを察したエリーが咄嗟に横に飛ぶも、彼女の左腕が切断されて中に舞った。


「『雷刃(らいじん)』です。以後、お見知り置きを」


 ちょっと!? エリーの腕が! 桜花! 若葉! 見てないでエリーを助けないと!!


「落ち着け主殿。エリーの腕なら既に再生されておるぞ?」


 おお!? 以前はちょっと時間が掛かっていたけど、これも半月でパワーアップしたおかげなのか?


 偉そうに復活した割には『雷刃』以外に有効打が無いらしく、彼はソレを連発する。

 当然だがエリーの後方に『雷刃』の被害が及ぶ。


「ちょ! 危ない! アリス! 右だ! いや、左か!」


 文字通り右往左往する俺達の騎馬に、背中の桜花が振り回される。


「だから落ち着けと言っておる! 魔法による障壁を張ったから問題無い!」


『せやでー。さっきからカンカン弾いとるやろ? ……やろ? ……ろ? ……』


 おお? 確かに。

 ちなみに若葉さんはやる事が無いので俺達の後ろで待機中だ。


 エリーと森平が一進一退の攻防を繰り広げる中、辺りに散乱するのは『雷刃』で切り落とされたエリーの腕や足……怖すぎるんだけど!?

 十本? 以上あるけど体力とか大丈夫なのか?


「『雷刃』がエリーの防御を上回っている以上、長期戦はマズいのぉ」


「エリーにも魔法障壁を使えないの?」


「距離が離れすぎじゃ。固定で設置する分には問題無いんじゃが……」


 じゃあ……


「ちなみに物理的な攻撃はすり抜ける設定に出来たりする?」


「!! なるほど! そういう事か! それは良いアイデアじゃな。しかしタイミングが問題じゃぞ」


「それはテレパシーでよろしく。とにかく上に、何十メートルか真上に打ち上げるように伝えてくれ」


「それは構わんが、まだ隠し球があるのか?」


『奥の手っちゅーやっちゃな? ……ゃな? ……な? ……』


 エコーはもういいから。スマホで連絡をとる。そろそろ決着だ!



「いい加減に諦めろ! 特大の『雷刃』で真っ二つにしてやる!」


 しつこく縋ってくるエリーに向けて、森平が一瞬タメに入る。構わず突撃するエリーに特大の『雷刃』が放たれて……


 カンッ……


「!!」


 軽い音の後に『雷刃』がかき消えた。魔法障壁をすり抜けたエリーの渾身の左アッパーが森平の下顎に綺麗に入り、再びクチバシを砕かれた彼の体が僅かに宙に浮いた。


「浅い!?」


『続けていくよぉ!!』


 その場でしゃがんだエリーの足元に亀裂が入り、本命の右アッパーがジャンプの加速と共に放たれた。


 腹部にアッパーを受けて、数メートル程上昇した森平に向けて再度ジャンプするエリー。


 迎撃もままならない連続攻撃に羽ばたく事すら許されない森平は、突き上げるように放たれた彼女の蹴りをまともに受けて更なる上空へと一気に飛ばされる。


『行っっけぇぇーー!!』


「ひとまず主殿の指示通りになったが……む!? あれは!」


 最後の決め手。

 その為だけに呼び寄せた彼女の一手に向けて、今日の作戦の全てを動かした。


 これで駄目なら桜花のドカンだ!


『自分に任せて下さい!!』


 上空およそ二十メートル。ビルにして五階相当の高さで、あきらさんの蹴りが森平に直撃した。

 その爪によって彼の翼を切り裂いてから。


 金髪にして金色の瞳。牙と爪が伸び、背中にはコウモリを思わせる黒い翼。

 相変わらずの黒い革ジャンだが、あれがあきらさんの『完全変化』か。……言っちゃ悪いが格ゲーの2Pキャラみたいだな。


 翼を切り裂かれた森平は態勢を整える事も叶わず、あらかじめ打ち合わせておいた近所のスーパーの駐車場に墜落。


「爆破!」


 俺の合図であらかじめ仕掛けられたC-4爆薬、いわゆるプラスチック爆弾が大爆発を起こして……なんか大爆発過ぎない? こっちまで被害が!?


「蘭堂君! 設置したC-4が想定以上の威力だ! こちらは軽傷者が数名! 有原君に治療を求める! 以上!」


 実は居た、スライムの有原次郎。狙撃班やサポート班の為のゾンビよけと、負傷者の為に連れてきていたのだ。

 彼の治癒能力が役に立って良かった。


 しかし実戦では初めてだろうが、練習でその威力と取り扱いに習熟している筈の彼らが失敗を?


「蘭堂君! 変電所屋外設備の一部が破損! 電圧低下で広域が停電しているようだ!

 至急司令室で調整しないと他の重要施設に被害が出るぞ!」


「桜花はゾンビに建物から至急離れるように命令を! それが済み次第職員達を司令室へ!

 エリーと若葉さんは上層部のゾンビのケツを叩いて急がせろ! なんだったら窓から放り出してもいい!」


「「「了解!!!」」」


「命令が終わったら桜花は俺と一緒にスーパーだ! アリス! イリス! ウリス! 大変だろうが頑張ってくれ! 行くぞぉーー!!」


 沈黙したまま急加速するアリス達。振り落とされないようにアリスの頭にしがみ付いて……シャンプーの良い匂いが素晴らしい。

 すんすん、はぁはぁ。むっはー!


「主殿! 変態行為は後にしろ! 森平が虫の息だとあきらから連絡が入ったぞ! トドメをさせば良いのか!?」


 アリスに(くつわ)と手綱も付けるべきだったかと反省してから考える。

 森平は尋問して情報を吐かせるべきだが、逃げられる可能性が高い。飛んで逃げられたらそれで終わりだ。やむを得まい。


「あきらさんに伝達! 即座に、確実に息の根を止めろ!」


「承知した!」


 揺れるアリスの双丘にしがみ付いてスーパーを目指す。民家の塀を越えて屋根に飛び乗って。

 アリス達の三位一体というか、一心同体というか、まるで一つの生物のような動きに無駄は無く、一直線に目的地へと駆ける。


 だから桜花! しがみつくのは良いけど首を絞めるな! 苦しいってば!


 スーパーの駐車場……だったと思われる場所には大きなクレーターが出来て、その中心部分に横たわるボロボロの森平? と、傍らにあきらさんが風に揺れる金髪と金色の瞳を半月で輝かせて、俺達の到着を待っていた。


『な、な、な!』


「「な?」」


『なんですか! その破廉恥なゾンビ達は!!』


 第一声がそれか。桜花の趣味? とは言え破廉恥なのは……まぁ、誠に遺憾だが認めざるを得ない。

 パッツンパッツンのムチムチ体操服に、同じくパッツンブルマ。残念ながら反論のしようが無いな。


「ゾンビで騎馬を組むから動きやすいように体操服を用意して貰っただけだよ。

 急いで用意したからサイズはちょっと小さかったみたいだけど……あきらさんはどこが破廉恥に見えるの?」


『い、いや、その、だって……と、朝春君! 意地悪しないで下さい!』


 あきらさんの羞恥心に訴えて論点をすり替える作戦が成功したところで、森平の状態を尋ねる。


「相変わらずサイテーじゃな、主殿は。……そこの男は完全に死んでおる。

 森平に仲間がおると警戒するなら、今この時も監視されていると考えた方が良かろう。

 こやつの死体を奪われるか、はたまた余達にちょっかいを出してくるか……警戒のしがいがあるとは思わぬか? のぅ、あきらよ」


 真っ赤な顔で、それでも『完全変化』のまま、もじもじとアリス達をチラ見するあきらさん。

 未だに俺の背中に張り付いたままの桜花と共に自衛隊のサポート隊の到着を待つ。


 元凶のテロリスト、森平将介は死んだ。あきらさんの最後の一撃で。

 だから俺達は警戒していたとは言え、退屈な事後処理を想像してうんざりするだけだった。


 警戒中に上位種が突撃! なんて珍しくも無い。俺達もやったし、やられたから。


 だから、彼女が突撃してきても、俺達が文句を言う筋合いは無い。彼女を受け止めよう。その、言動以外を。


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